漫画ビジネス

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2024年09月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「『鬼滅の刃』のようなメガヒット漫画をつくりたいが、どうすればいいか?」

著者のもとに、こうした漫画事業立ち上げの相談が次々と舞い込んでいるという。マンガ『鬼滅の刃』の経済規模は、2020年で約1兆円といわれる。2024年6月には、米PEファンド・ブラックストーンが電子コミックプラットフォーム「めちゃコミック」の運営会社を約2800億円で買収したというニュースが世間を駆け巡った。巨大マネーが流れ込むほど、注目度が増す日本の漫画業界。マンガ、アニメ、ゲームを含んだ「コンテンツ産業」の輸出額は、半導体産業や鉄鋼産業に肩を並べるほどだ。

そもそも、なぜ日本はマンガのメガヒットを生み出し続けているのか? そのヒントは、「裾野広ければ頂き高し」だと著者はいう。漫画家がたくさんいて、多様な作品が生まれるほど、面白い作品ができて業界が発展するという意味だ。日本の漫画業界は、まさにこれを体現してきたと著者は考察する。ではなぜ、この創作の好循環をつくれたのか。はたして漫画ビジネスへ参入し、大ヒットを生み出せるのだろうか?

著者は、コンサルタントを経て漫画業界に参入し、15年間この業界の分析と検証を行っている。そんな著者が、ビジネス視点に立ちながら、世界で通用するマンガのつくり方について考察を深めていく。本書を読むと、創作者たちへの愛がにじみ出ていて、胸が熱くなる。さらにはマンガを読みたくなり、漫画ビジネスの深みにどっぷりハマってしまうこと請け合いだ。

ライター画像
松尾美里

著者

菊池健(きくち たけし)
一般社団法人MANGA総合研究所所長/マスケット合同会社代表
1973年東京生まれ。日本大学理工学部機械工学科卒。商社、コンサルティング会社、板前、ITベンチャー等を経て、2010年からNPO法人が運営する「トキワ荘プロジェクト」ディレクター。東京と京都で400人以上の新人漫画家にシェアハウス提供、100人以上の商業誌デビューをサポートし、事業10周年時に勇退した。同時に、京都国際マンガ・アニメフェア初年度事務局、京まふ出張編集部やWebサイト「マンナビ」などを立ち上げた。その後、マンガ新聞編集長、とらのあな経営企画、SmartNewsマンガチャンネル、コミチ営業企画、数年にわたり『このマンガがすごい!』(宝島社)の選者を務める。クリエイター支援やデジタルコミックの事業での事業立ち上げ、営業、企画、イベント、編集、ライティング等を得意とする。noteにて毎週日曜日に「マンガ業界Newsまとめ」を発信。共著『電子書籍ビジネス調査報告書2023』(インプレス総合研究所)のウェブトゥーンパートを担当した。2024年3月に、一般社団法人MANGA総合研究所を設立。

本書の要点

  • 要点
    1
    マンガのメガヒットを生むカギは「裾野広ければ頂き高し」にある。
  • 要点
    2
    マンガは紙の低迷を電子コミックの奇跡的な伸びでカバーし、漫画業界は未曾有の好景気に入った。
  • 要点
    3
    動画配信サービスの台頭と相まって、ウェブトゥーン市場が成長している。
  • 要点
    4
    日本のエンタメ産業の発展には、「非合理がゆえの合理」を維持しながら、つくり手のパワーを増幅する環境を整備し、海外にビジネスを仕掛けることが必要だ。

要約

日本のマンガがメガヒットする理由

「裾野広ければ頂き高し」の意味

「裾野広ければ頂き高し」。これは名作『あしたのジョー』を生んだちばてつや氏の言葉だ。漫画家がたくさんいて、多様な作品が生まれる環境になるほど、面白い作品ができて業界が発展するという意味である。これは日本のマンガ発展の真理だ。

2010年頃、書店で漫画単行本を発行する漫画家は約6000人、単行本のアイテム数は1万2000冊強あった。プロだけでなく漫画家志望者も加えると、この裾野はさらに広いといえる。

しかも、以降、漫画家や作品の数は拡大の一途をたどっている。その要因は次の3つだ。1つ目は、スマホの普及で電子書籍プラットフォームや漫画アプリから生まれたマンガの数が増えていること。2つ目は、出版社を介さない、個人による漫画販売が増えたこと。そして3つ目は、ウェブトゥーンと呼ばれる縦読みのマンガを制作する、ウェブトゥーンスタジオ設立ブームが起きたことである。

著者の肌感覚では、年間1万5000~2万ほどの作品が生み出されている。日本の映画が年間で676作品、テレビアニメ制作本数が300前後であることと比べると、かなりの多さといえる。

漫画業界では、ヒット作品が出る確率は1000作に3作ほどといわれる。生み出される作品が多いほど、わずかな確率だが、メガヒットが生まれる可能性が上がるのだ。

週刊漫画誌という発明
Sensay/gettyimages

なぜ日本でこれほど多くのマンガを生み出せたのか。それは、週刊漫画雑誌の存在が大きく寄与している。今から60年以上前に小学館の週刊少年サンデー、講談社の週刊少年マガジンが同時創刊し、のちに集英社の週刊少年ジャンプ、秋田書店の週刊少年チャンピオンなどが創刊となり、これらが多種多様な作品づくりの基盤となった。

週刊漫画誌はユニークなものだ。1誌あたり約20作品が掲載され、1話20ページほどのマンガが原則月に4~5本載ることになる。つまり、一人の作家と一人の編集者が、読者の満足するボリュームの作品を毎週描いて出し続けるのだ。これは世界に類を見ないハイペースでの創作であり、日本のマンガの裾野を広げてきた。

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要約公開日 2024.11.29
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