問いの編集力
問いの編集力
思考の「はじまり」を探究する
問いの編集力
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2024年09月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

2020年度以降、小・中・高等学校で新しい学習指導要領がスタートしている。そこでのキーワードは「探究学習」。激しい時代の変化に対応するために、子どもに自ら問いを立てて解決する力を身につけさせようと、探究的な学びが重視されている。同様の能力はビジネスの現場でも重視され、「課題解決力から課題発見力へ」をスローガンに自律型人材の育成の必要性が盛んに叫ばれるようになってきた。探究するべき「問い」を発見する力が必要なことに多くの人が気づき始めているが、「問う力」を教わってきていない世代は、自ら「問う」ことも、他者の「問う力」を育てることも難しいのが現状だ。

編集工学研究所・代表取締役社長の安藤昭子氏は、本書で「問う」という行為そのものを探究し、そのプロセスを体系化しようと試みる。「内発する問い」のメカニズムを、人間の持つ「編集力」の視点から読み解き、問いを喚起する方法論や、豊富なワークを展開していく。人材育成や組織開発、教育プログラムの設計を手がけてきた著者ならではのエピソードがふんだんに紹介される。自律的に学ぶ力を自ら身につけたいと願う人、そして教育や人材育成に関わる人にとって、本書はたくさんのヒントを与えてくれる一冊になるだろう。読み終わったら、自分だけの「問い」を探しにいきたくなるはずだ。

ライター画像
池田友美

著者

安藤昭子(あんどう あきこ)
編集工学研究所・代表取締役社長。出版社で書籍編集や事業開発に従事した後、「イシス編集学校」にて松岡正剛に師事、「編集」の意味を大幅に捉え直す。
これがきっかけとなり、2010年に編集工学研究所に入社。2021年に代表取締役社長に就任。
企業の人材・組織開発や理念・ヴィジョン設計、教育プログラム開発や図書空間プロデュースなど、多領域にわたる課題解決や価値創造の方法を「編集工学」を用いて開発・支援している。
「Hyper-EditingPlatform[AIDA]」プロデューサー、丸善雄松堂株式会社取締役。
著書に『才能をひらく編集工学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「問う」という行為は、つきつめれば「情報」を「編集」することだ。「問いの編集力」は、誰もが持っている「編集力」によって、その人ならではの内発する「問い」を引き出そうとする試みである。
  • 要点
    2
    本書は、問いが生まれるプロセス、「問い」の土壌をほぐす、「問い」のタネを集める、「問い」を発芽させる、「問い」が結像する、の4つのフェーズで考えた。
  • 要点
    3
    問いの編集力とは、「問う」という知的営みを、一人ひとりの編集力でアップデートするプロジェクトだ。

要約

なぜ「問い」を「問う」のか

はじまりの不思議

理化学研究所と、著者の所属する編集工学研究所の共同事業に「科学道100冊」というプロジェクトがある。これは、100冊の書籍の紹介を通して、科学者の生き方や科学の面白さを広く人々に届けることを目的とした事業だ。100冊の構成を組み立てるにあたって、科学者の思考プロセスをモデル化することになった。多くの科学者へのインタビューと編集工学の視点から導いた探究思考のプロセスは、次のような6つの見出しにまとめられた。

1.はじまりは疑問

2.果てしない収集

3.導かれたルール

4.めくるめく失敗

5.まるで魔法

6.未来のはじまり

書店や図書館のフェアから始まり、学校の先生からも注目されるようになると、「6つのプロセスはまさに子どもたちに伝えたい探究のプロセスです」というコメントとともに、ある先生からこんな疑問が届いた。「最初の“はじまりは疑問”はどうするとはじまるのでしょう?」

人はなぜ疑問を抱くのか。その疑問を持ち続ける人がいるのはなぜか。著者はこれにうまく答えられなかった。以来、「人はいかにして問うのか?」という「問い」が、著者の宿題となった。

問いの編集力
Halfpoint/gettyimages

「科学道100冊」に注目してくれた先生や、編集工学研究所が人材育成や組織開発のお手伝いをしている企業から話を聞くと、子どもも大人も「はじまりは疑問」の段階に問題を抱えていることがわかった。「いかに問うか」が大切であることは多くの人が認識しているにもかかわらず、肝心の「問い方」がわからないのだ。

本書は、「問いはいかに生まれてくるのか」という、自分の中から「内発する問い」とその発生のメカニズムについて、人間の編集力に重ねて考えようと試みる。

「問い」はすでに知っていることと、まだ知らないことのズレから生じる。「問う」という行為は、つきつめれば「情報」を「編集」することだ。私たちは普段の生活の中で、あらゆる「情報」に囲まれ、それを「編集」しながら生きている。「問いの編集力」は、誰もが持っている「編集力」によって、その人ならではの内発する「問い」を引き出そうとする試みである。

「問いの編集力」とは、「問いを引き出す編集力」であり、「問いに宿る編集力」であり、「問いの姿をした編集力」であるとも言える。人間だけに許された「問う」という知的営みをアップデートするプロジェクトを始めよう。

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要約公開日 2025.01.11
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