「食事はすべての基本だ」と考えるグーグルは、社員に無料で飲食物を提供している。日本オフィスでもランチは無料で、デザートを含めた豊富なメニューがすべて無料で提供されるため、太ってしまう人もいるようだ。
そこでグーグルは「社員の寿命を2年延ばす」ことを掲げ、その施策を実行した。その1つが、ニューヨークオフィスの食堂のレイアウト変更だ。社員ができるだけ健康的なものを摂取し、かつ必要以上に食べ過ぎないような工夫をしたのだ。
具体的には、野菜や果物を目立つ場所に置き、デザートは目立たない場所に配置した。また、デザート容器を小さいサイズにしたり、皿置き場には「大きいお皿を使う人ほど、よりたくさん食べる傾向があります」と表示したりもした。
効果は開始してすぐに出始めた。1週間で菓子類のカロリー摂取は9%低下し、小皿の利用率は1.5倍に上がった。また、甘いソーダ飲料の代わりにミネラルウォーターを取りやすい場所に移動させたら、水の摂取量は47%増え、飲み物からのカロリー量は7%減少した。
グーグルの取り組みは、行動経済学の「ナッジ(nudge)」に基づいている。ナッジは強制や命令に頼らず良い行動に導く手法で、様々な場面で活用されている。
ナッジの仕組みは、選択者の自由意思への影響を少なくしつつ、合理的な判断へ導く「選択アーキテクチャー」と呼ばれるものだ。主なパターンには次の4つがある。
(1)選択肢をわかりやすくすることで行動を促す「選択の構造化」
(2)望ましい選択をあらかじめ初期設定にする「デフォルト」
(3)何らかの行動を起こした人に対して、その内容に応じた反応を返す「フィードバック」
(4)特定の行動を取った際に得する仕組みを作り、無意識にその行動を取るよう動機づける「インセンティブ」
「選択の構造化」の一例を挙げると、飲食店のメニューに表示されている「店長のおすすめ」マークや、カレー料理などの「辛さのレベル」マークがある。
「デフォルト」の例は、新品のスマホにあらかじめインストールされているアプリだ。放置するとメモリーの無駄遣いになるが、不要なアプリをチェックして削除していくのは手間がかかる。設定変更の負担を避け、初期状態を受け入れるように仕向けているのだ。
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