それでも幸せな人、不幸な人
それでも幸せな人、不幸な人
それでも幸せな人、不幸な人
出版社
出版日
2024年10月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

コップに半分水が入っている。これを見て「半分もある」と思うか、「半分しかない」と思うか――。

元は、ピーター・ドラッカーがイノベーションの発生を比喩的に解説した「コップの水理論」だが、近年は心理テストとして広まっている。「半分もある」と感じる人はポジティブで幸せを掴みやすい。一方「半分しかない」という人はネガティブで幸せを逃しやすい。「本当は『半分しかない』と思うけど、ネガティブだと思われたくないから『半分もある』と言っておこう……」という人は、案外たくさんいるかもしれない。

本書でもこの「コップの水」の喩えが何度も出てくる。しかし、著者が説く「答え」は上記のような単純なものではない。「半分しか入っていない。それでも、自分が飲むには十分な量だ」「半分しかない。それでも水があるだけ幸せだ」。そう思える人が「幸せな人」なのだという。

私たちは地位やお金や外見などで、その人が幸せかどうかを判断してしまう。だが著者は「幸せか不幸かは、社会的・経済的なものと関係しない」と断言する。幸せになるために必要なのは、小さな幸せを感じられること、心に葛藤がないこと、そして不幸を受け入れながら「それでも幸せ」と思えることだと言う。

著者は心理学の大家・加藤諦三氏だ。歯に衣着せない物言いは、ときにストレートに心に刺さる。しかし、だからこそハッとさせられ、自らを振り返るきっかけにもなる。

さて、あなたは見せかけの幸せを求めていないだろうか。「それでも幸せ」な人だろうか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

加藤諦三(かとう たいぞう)
心理学者。1938年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院修士課程修了。早稲田大学名誉教授。1973年以来2021年までハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員。ラジオの「テレフォン人生相談」パーソナリティーを60年以上担当。2009年、東京都功労者表彰を受賞。2016年、瑞宝中綬章を受章。
主な著書に、『「心の重荷」の降ろしかた』『あなたは、あなたなりに生きれば良い。』『自分を嫌うな』『無理しないほうが愛される』(三笠書房)、『自信』『感情を出したほうが好かれる』『無理しない練習』『「自分の心」をしっかり守る方法』(三笠書房《知的生きかた文庫》)など。ベストセラー、ロングセラーは多数。海外へ翻訳されている著作は約80冊に及ぶ。

本書の要点

  • 要点
    1
    悩みを本気で解決しようとしない人は、心の奥底では愛を求めている。
  • 要点
    2
    自己実現している人は、「にもかかわらず」という考え方をする。コップに水が半分しかない「にもかかわらず」幸せなのだ。
  • 要点
    3
    悩んでいる人は、無意識の領域に欲求不満や怒りを抱えている。幸せになるには、その無意識を意識化する必要がある。無意識の問題が解消されたら、自然と「ある」ほうに目がいくはずだ。
  • 要点
    4
    現実で幸せになるには、不幸を受け入れなければならない。

要約

【必読ポイント!】「それでも」幸せな人とは

「不幸を受け入れる」ことが幸せの条件

人間の悩みは、一生なくなることはない。すべての望みが叶って悩みが消えたとしたら、そのとき、周りの人は相当我慢しているはずだ。当然、多くの人から恨みを買っているため、いつかそのツケを払うことになる。

多くの人は「悩みはなくならない」ことを知っている。それでも「すべての悩みがなくなる」ことを望んでしまうのは、心の底に「憎しみ」があるからだ。

このような人たちはすぐに結果を求めて、時間をかけて物事を成就しようとしない。そして、幼児が母親に抱くような「完全な愛」を要求する。彼らは心理的には幼児であり、幼児的願望が満たされていない人たちなのだ。

また、彼らは目の前の現実的な解決法を無視して「ないものねだり」をする。たとえば、結婚後に好きな人ができて離婚したいと願うものの、傷つくのは嫌だし、できれば周りの人に祝福されて離婚したい。そのような非現実的な解決を求める傾向がある。

現実的に対処するには、時間も労力もかかる。そして往々にして、幸せと不幸はセットになってやってくるものだ。

悩む人は「愛」を求めている
Somsri Luangsod/gettyimages

なぜ彼らは本気で悩みを解決しようとしないのか。それは、解決するには現実に直面しないとならないからだ。解決に至る道中には、嫌なことが必ずある。

実際、彼らの多くは解決を望んではいない。愛を求めているだけである。だから、いつまでたっても悩みは解決しない。

一例を挙げると、「頭が痛い」と訴える人に「お医者さんへ行こう」と声をかけても、病院に行こうとしない。そして「痛い、痛い」と言い続ける。これでは周りの人もさじを投げたくなってしまう。

彼らが「頭が痛い」と言い続ける目的は、「生きるのがつらい」ことを訴えるためである。この不満を言い続けるエネルギーは、愛を求めるエネルギーだ。こうして文句を言うことが彼らにとっての救いであり、抑圧された敵意を間接的に表現する手段なのである。

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要約公開日 2025.01.10
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