酒ビジネス
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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2024年10月31日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

近年、国内外で一大ブームとなっている「日本酒」。あなたはそんな日本酒について、どのくらい知っているだろう。

本書の著者、髙橋理人氏は、年間2000種類の日本酒を飲む酒蔵コーディネーターだ。新卒入社した大手化学メーカーにて新潟県糸魚川市に赴任したことで、日本酒に開眼。大手コンサルティングファームに転じたのち、2020年10月には株式会社蔵楽(くらく)を創業して、東南アジア向けの輸出や日本酒サブスク「TAMESHU(タメシュ)」を手がけている。

本書はそんな髙橋氏が、多様な視点から「日本酒ビジネス」について解説してくれる一冊だ。なぜ八海山はいつでもどこでも美味しく飲めるのか、獺祭の何がすごいのか、新ジャンル「クラフトサケ」とは何か……日本酒ファンはもちろん、そうでない人も気になるテーマが目白押しである。

本書を読めば、お酒がもっとおいしくなるに違いない。また海外のお客さまを迎える前に読んでおき、接待の場で知識を披露すれば、きっと喜ばれるはずだ。

さて、要約ではまず「なぜ八海山はどこでも美味しく飲めるのか」を取り上げる。読み始めたらすぐ、お酒が飲みたくてたまらなくなるだろう。可能であれば、手元においしいお酒を用意してから読み進めることをおすすめしたい。

著者

髙橋理人(たかはし まさと)
株式会社蔵楽代表/呑み手のプロ
早稲田大学商学部を卒業後、大手化学メーカーに新卒入社。社会人初の赴任地である新潟県糸魚川市にて日本酒に開眼。その後、大手コンサルティングファームにて製造業の業務・経営改革に従事。コロナ禍を契機に、2020年10月に株式会社蔵楽(くらく)を創業。「酒蔵を世界一働きたい場所に」をビジョンとして、東南アジア向けの輸出、日本酒サブスク「TAMESHU(タメシュ)」の他、酒蔵のプロデュースや酒イベントの企画など幅広い事業を行っている。製造から流通まで酒業界全般に対する幅広い知見を持つ。現場と「苦楽」を共に、汗をかきながら寄り添う支援を得意とする。座右の銘は「一周回って本醸造」。J.S.A認定SAKE DIPLOMA、ワインエキスパート、SSI認定国際唎酒師などを取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    平成元年頃、「八海山」(新潟県)の製造が追いつかずプレミア化が起こった。八海山を醸造する八海醸造は、それを“利益を高く取るチャンス”とは捉えず、製造体制に投資して「質」と「量」を両立させた。
  • 要点
    2
    2022年の日本酒全体の輸出額は約475億円で、その15%を「獺祭」(山口県)が占めている。そんな獺祭のすごさは、「酒米の王様」と呼ばれる山田錦を原材料とし、最大限の手間とコストをかけて製造している点にある。
  • 要点
    3
    日本酒を造るためには清酒の酒類製造免許が必要だが、日本国内では70年間で一度も新規免許が発行されておらず、休廃業した酒蔵を買収・継承するしかなかった。そのような業界に新風を吹き込んだのが、クラフトサケを製造・販売する「WAKAZE」だ。

要約

【必読ポイント!】 「八海山」に学ぶ酒ビジネスの世界

なぜ八海山はどこでも美味しく飲めるのか
tomoya murakami/gettyimages

「八海山」(新潟県)は、日本酒を嗜む人ならきっと口にしたことがある、知名度の高いお酒だ。居酒屋で飲めるほか、スーパーやコンビニでも手軽に購入できる。

八海山を醸造する八海醸造はどちらかというと若手の酒蔵だ。創業数百年の蔵も少なくない中で、八海醸造は創業100年を迎えたばかりである。

そんな八海醸造の手掛ける事業は幅広い。日本酒以外にも焼酎や梅酒、地ビールを醸造しているし、グループ会社では北海道のニセコでジンとウイスキーを製造している。また、東京都の麻布・日本橋に直営店「千年こうじや」を構えて地元の魚沼の食文化を発信しているほか、本拠を置く南魚沼市では複合施設「魚沼の里」を運営している。海外では、アメリカ・ニューヨーク州で初のクラフトSAKEメーカー「Brooklyn Kura」とパートナーシップを締結した。

これほど多角的な経営を行い、ブランドの認知が高まっている八海山を、なぜ私たちはいつでも美味しく飲めるのか。その理由は、八海醸造が「よい酒を、より多くの人に」という理念のもと、企業努力を続けているからだ。

実は平成元年頃、八海山の評価が高まる中、製造が追いつかずプレミア化が起こり、2000円のお酒が5000円で流通したことがあった。一般的な企業なら、これを“高く利益を取るチャンス”と捉えるかもしれない。だが八海醸造は違った。「商品が需要に対して少ないのは、メーカーとして供給責任を果たせていないから」と考え、供給量の確保に努めたのだ。しかも「製造体制をそのままにして製造量だけを増やすと、日本酒は必ず質が悪くなる」として、設備の拡充と刷新、原料確保などへの投資をためらわなかった。

「質」と「量」を両立させる努力があったからこそ、私たちはいつでもどこでも八海山を美味しく飲めるのである。

なぜ今、世界で日本酒が人気なのか

今、世界各地で日本酒が注目されている。数字で見ても、2022年度の日本酒の輸出額は475億円と、2009年の6.6倍にのぼる。日本酒の国内市場は4500億円と推計されているので、約1割相当が海外で販売されている計算だ。

なぜ世界中で日本酒の人気が高まっているのか。その理由は3つ考えられる。

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要約公開日 2025.01.12
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