図解 人材マネジメント入門
図解 人材マネジメント入門
人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ
図解 人材マネジメント入門
ジャンル
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2020年05月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「人材マネジメントとは何か」――たとえ人事として経験を積んでいても、この問いに端的に答えられる人は決して多くないだろう。だが本書を読めば、人材マネジメントに対する解像度が上がるはずだ。

著者の坪谷邦生氏は、人事担当者、人事マネジャーとして12年の経験を持つ。そんな坪谷氏は本書の「はじめに」で、読者に向けて次のように書いている。

「私は新卒2年目でエンジニアから人事に転身したのですが、そのとき人材マネジメントの領域の広さに驚き、捉えようのなさに混乱し、理解に苦しみました」

おそらく多くの人事経験者が、坪谷氏の驚きと混乱、そして苦労に共感するのではないだろうか。

本書では著者の豊富な経験をもとに、人材マネジメントを体系的に学べる一冊としてデザインされている。人材マネジメントは「人事評価」「報酬」「等級」「リソースフロー」「人材開発」「組織開発」という6つの要素で構成されているとし、それぞれの要素について、1~2つのチャプターにわたって解説する仕立てだ。

初学者にとってありがたいのは、一つひとつのチャプターが見開き完結で、左ページにテキストが、右ページに図が配されていることだろう。さらに、左ページの上部にはその見開きのテーマを端的に表す問いが、右ページの上部には問いの答えが明記されている。人材マネジメントについてよりスムーズに理解するために、まずそれぞれのページのQ&Aに目を通してから通読するのもおすすめである。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

坪谷邦生(つぼたに くにお)
株式会社壺中天 代表取締役
壺中人事塾 塾長
中小企業診断士
Certified ScrumMaster認定スクラムマスター
1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し現在に至る。
主な著作に『図解 組織開発入門』『図解 目標管理入門』『図解 労務入門』(以上、ディスカヴァー)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    人材マネジメントは「人事評価」「報酬」「等級」「リソースフロー」「人材開発」「組織開発」という、お互いに有機的に結びつく6つの要素から構成されている。
  • 要点
    2
    人事評価の目的は「公平感ある処遇の分配」「社員の活用と育成」「企業文化の醸成」だ。中長期的に見ると、特に「企業文化の醸成」が重要だ。
  • 要点
    3
    健全な組織を実現したいなら、代謝(退職)の設計が不可欠だ。退職率をコントロールすることにより、痛みを伴うリストラが避けられるとともに、適正な新陳代謝が発生する。

要約

人材マネジメントとは何か

人材マネジメントの目的
ディスカヴァー・トゥエンティワン提供

「人材マネジメント」の目的は、人を生かし、短期・長期の組織パフォーマンスをあげることだ。人材マネジメントは「人事評価」「報酬」「等級」「リソースフロー」「人材開発」「組織開発」という、お互いに有機的に結びつく6つの要素から構成されている。一つひとつの要素について、簡単に説明したい。

人事評価は、「やってもやらなくても同じ」という悪平等をなくすためのものだ。等級に応じて行われ、評価結果が他の各要素に影響する。

報酬は、賃金に限らず、働くことによって得られるすべてのものを指す。報酬の水準は等級によって決まり、人事評価の結果が反映される。

等級は、人材マネジメントのコンセプトを具現化したもので、報酬の根拠となる。

リソースフローは、人材が入社してから退職するまでの一連の流れのことだ。採用要件は等級に紐付けて設定され、異動配置と代謝は人事評価結果をもとに決定される。

人材開発は、人材の成長のために企業が行う投資だ。異動もその一つである。

組織開発は、組織の効果を高める計画的な取り組みのことだ。組織プロセスを変革し、人と人との関係性にアプローチする。

本書は、これら6つの要素について、それぞれ1~2つのチャプターを割いて解説されている。要約ではそのうち「人事評価」「リソースフロー」「人材開発」を取り上げる。

【必読ポイント!】 人事評価

人事評価によって目指すべきものとは?

人事評価の目的は3つある。

1つ目は「公平感ある処遇の分配」、つまり限りある「宝」(企業の利益)を山分けすることだ。「宝」には、賃金はもちろん、仕事や勤務地、福利厚生など、あらゆるものが含まれる。社員が処遇の分配を公平と感じなければ、不満につながる。

2つ目は「社員の活用と育成」だ。一人ひとりの現状を評価することで、それぞれがどうすれば活躍できるか、これからどう成長するべきかを検討し、異動、配置、仕事のアサインなどに反映する。

3つ目は「企業文化の醸成」だ。人事評価におけるフィードバックの積み重ねが企業文化を作る。中長期的に見ると、この目的こそ、組織にとって最も重要である。

人事評価における一次評価者の役割は何か?

一次評価者の役割は、メンバーの成果と行動を「正しく見る」ことだ。これを実現するためのポイントは3つある。

1つ目は、評価の責任を持つことだ。評価するメンバーの給与や処遇、さらには中長期の成長やキャリアに責任を持ち、時には上司や人事と戦ったり、部下に厳しい評価を伝えたりすることも必要である。

2つ目は、適正な人数の評価を行うことだ。一人の一次評価者が見られるのは7名まで。これ以上だと、適正な人事評価にならない。

3つ目は、すりあわせ会議で主観を磨きあうことだ。一次評価者が集まり、「自社にとって価値ある成果や行動」とは何かを考えながら主観を磨きあって、評価のばらつきを最小限にとどめることを目指そう。

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要約公開日 2025.02.16
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