本書では「労務」を「労働における義務を果たすこと」と定義する。
労働における「義務」は、企業と働く人どちらにもある。企業の義務は法のもとで働く人を守る義務、働く人の義務は労働を提供し、社内秩序を守る義務だ。
労務は6つの要素から構成されている。それぞれ見ていこう。
1つ目は「ルール」だ。労働法を遵守し、就業規則を定めて労働者に周知徹底するとともに、ルールが守られている状態を維持する。
2つ目は「労働時間と対価」だ。労働時間を管理し、労働の対価を支払う。
3つ目は「生活と健康」だ。社内外の支援リソースを活用しながら、ライフイベントの支援、安全衛生管理体制の整備、メンタルヘルス対策などを行い、労働者の生活と健康を支える。
4つ目は「雇用」だ。労働者の入社・異動・退職に関する各種手続きや、トラブル防止対策・解決に従事する。
5つ目は「労使関係」だ。労働紛争や労働組合の対応をする。
6つ目は「労務体制」だ。労務に関する業務体制と組織体制を整備し、労務担当者を採用・配置・育成する。
本書ではこれら6つの要素についてそれぞれ語られているが、要約ではそのうち「ルール」の一部である「労働法・就業規則」、「生活と健康」、そして「労務体制」の一部である「労務担当者」の章を取り上げる。
労務の役割は3つある。オペレーションエクセレンス(OE)、ルールマスター(RM)、ストラテジスト(ST)だ。
オペレーションエクセレンス(OE)は、労働に関する事務・手続きなど、さまざまなオペレーションを滞りなく正確に処理していくことだ。
ルールマスター(RM)は、法令や就業規則などのルールに精通し、労働者からの相談や労使トラブルを解決することだ。労働法を遵守し、働く人を守りながら、労使がお互いに義務を果たし合う関係性を維持する。
ストラテジスト(ST)は、副業・兼業解禁や新型コロナウイルス流行といった社会の動きに注目し、自社の働き方やルールに反映させることだ。
労働法は労働に関する多くの法律を総称したものだ。労働法は、ともすれば過酷な労働環境に追い込まれてしまいかねない労働者を保護・救済するために存在している。
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