「ななつ星in九州」は、世界の旅行業界の権威ある雑誌『コンデナスト・トラベラー』誌で、2021年から2023年の間、「リーダーズ・チョイス・アワード」のトレイン部門で3年連続「世界一」に輝いた。目標としてきた「オリエンタル・エクスプレス」に肩を並べるだけでなく、それをも超えたのである。
ななつ星を体験したお客さまだけが集まる同窓会では、東京のホテルニューオータニのホールに500名以上の参加者が集まる。それほどの力を持つななつ星は、どのような歩みを経てきたのか。JR九州の社長(現在は相談役)としてななつ星を作り上げてきた唐池恒二が語っていくのが本書だ。
「九州内を巡る豪華寝台列車をつくればヒットする」。ななつ星のアイデアの発端は、唐池が30代半ばの頃に友人にもらった言葉にある。
時を経て2009年6月、九州新幹線全線開業の準備で忙しい時期、唐池は第4代JR九州の社長に就任した。幹部が集まる会議で、九州内を巡る豪華な寝台列車を作ることを提案する。そのときは、当時運輸部長だった古宮洋二氏(現・同社代表取締役社長)などから反対意見が出された。だが、九州新幹線全線開業という同社悲願の夢を叶えたのちに新たな夢をつなぐことは、経営者として最も大切なことだ。唐池は「諦めたら社長失格」という強い信念を持っていた。
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