株式投資には、過去のデータを基に将来の値動きを予想する「テクニカル分析」という手法がある。これは、多くの投資家が用いる王道の手法とされるが、著者は一度たりとも使ったことがない。過去の価格変動しか材料にできないテクニカル分析では、株価を動かす未来に存在する不確定要素を織り込んで考えることができないからだ。「ファンダメンタル分析」も、「現在わかっている数字」に頼るため、革新的なイノベーションを評価するには向いていない。
有名な手法を用いても、短期的な株価の値動きを読むことは不可能だ。その事実を受け入れたうえで著者が真に目を向けるべきだと考えるのが「メタトレンド」だ。メタトレンドとは、10年や20年、あるいはそれ以上の長い時間をかけて、社会そのものを変えるような「巨大な時代のうねり」である。メタトレンドを注視して早期に把握することで、社会が向かう方向とそれに乗じて成長する業界・企業に投資できる。これが著者の提案する「メタトレンド投資」だ。
メタトレンドには、「少し出遅れてもまったく問題がない」という大きなメリットがある。メタトレンドは、非常に長いスパンで社会を変化させる流れである。だから、投資を始めるタイミングが多少遅くても、メリットを享受できるのだ。
例えば、いまや巨大な時価総額を抱えるNVIDIAが脚光を浴び始めたのは、2018年頃だった。AIへの注力が注目を集め株価が上昇し始めた一方、振り返ってみればこのときはまだ株価が3ドルほど。その後、さらにChatGPTが脚光を浴び、NVIDIAの知名度が高まった2022年末でも、株価は14ドルほどだ。一見すると「遅い」と思いがちなこのタイミングで投資を始めていても、その後に10倍近くまで高騰しており、「遅すぎた」ことはないのである。
早い段階で投資できるに越したことはないものの、このようにメタトレンド投資にはいくつもの「参入タイミング」がある。リスクを抑えたいなら、「もう間違いない」という時期からはじめるのもひとつの戦略だ。
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