著者が目指す世界は、「国民総株主」である。「国民総株主」とは、「日本人すべての人がなんらかの会社の株式を所有している状態」だ。
現代社会は、資本を中心に動いている「資本主義」である。そこでの主役は「資本家」だ。この社会で主体者として生きていくには、「資本を持つ」ことが重要なのだ。
だが、日本で株式投資を行っている人は全体の約3割。残り7割の人々は、資本主義に主体的に参加していないとも言える。著者はこの状況を変え、すべての人が株を持っている状態=「国民総株主」にしたいと考えている。
一方で、アメリカの株式投資家比率は国民の約6割に達している。香港やシンガポールでも6割弱だ。こうした国々と日本の株価を比べると、日本よりも軒並みPER(株価収益率)が高いことがわかる。たとえば、日経平均株価のPERは15~16倍であるのに対し、アメリカの主要株価指数「S&P500」のPERは25~26倍だ。PERは企業の将来に対する市場の期待値を示す指標である。これは、日本企業の期待値が相対的に低いことを示している。
つまり、日本の投資家比率が高まればマーケットが盛り上がり、日経平均株価もさらに上がる可能性があるということだ。
株式投資家が増えてマーケットに資金が集まると、企業は資金調達が容易になる。企業投資は主に「設備投資」「人材投資」「研究開発投資」の3つに分類され、これらを通じて企業は成長し、売上高や利益が拡大していく。
その結果、従業員の所得が増加し、日本経済全体にも好循環が生まれる。株式投資によりマーケットが活性化されると、最終的に所得や賃金として自分たちにも恩恵が及ぶ。投資家が増加することは、社会にとっても望ましいことなのだ。
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