本書のテーマである「ニセコ化」とは、「『選択と集中』によってその場所が『テーマパーク』のようになっていく」現象である。
もともとニセコ地区は一般的な日本のスキーリゾートだった。しかし、景気低迷やスキーブームの終焉により、経営が立ち行かず、これらの施設は撤退してしまう。
そこに目をつけたのが海外資本のホテルだ。いまやニセコは多くの外国人観光客がやってくる高級リゾートとなっている。
外資のホテルはニセコで「選択と集中」を行った。
「選択」とは、その場所にやってくる人々を「選ぶ」こと。ニセコの場合は富裕層の外国人観光客がターゲットだ。
ニセコのラグジュアリーホテルでは、一泊10万円以上はザラ、1週間で3500万円のコンドミニアムもある。物価の高さは、ここにやって来る人を静かに「選択」していると言えるだろう。
さらにニセコでは、「選択」されてやって来た外国人富裕層に刺さるサービスが「集中」的に提供されている。看板は外国語のものばかりで、コンビニでは高級シャンパンが売られており、ホテルスタッフの多くは外国人だ。とにかく外国人富裕層にとって便利で快適な場所にするための空間作りが行われている。
なお、こうした「選択と集中」が起こる大前提として、ニセコの売りの一つである「パウダースノー」があることは見落とせない。「選択と集中」された外国人富裕層たちがこの地にやって来るのは、あくまでニセコの雪質に魅了されているからだ。
ニセコの売りを見きわめ、ターゲットを「選択」し、ターゲットに刺さるサービスを「集中」して提供する。こうしたプロセスにより、ニセコは世界的なスキーリゾートへと大化けしたのだ。
私たちは、東京ディズニーリゾートにいるとき、そこを日本だとは思わない。東京ディズニーリゾートの中では、その世界観に合うものが「選択」され、「集中」的に配置されて、イメージを壊すものは徹底的に排除されているからだ。
ニセコも同様である。そこは日本であって日本ではない雰囲気だ。外国語の看板に海外資本のホテル、働いている人は外国人ばかりと、外国人富裕層に合う世界観を作り上げるために、そこで売られるものや施設などが「選択と集中」されている。
「選択と集中」が行われた結果、ニセコは「テーマパーク」のようになったのだ。
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