苦手な人と上手につきあう技術
苦手な人と上手につきあう技術
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苦手な人と上手につきあう技術
出版社
ワン・パブリッシング

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出版日
2024年12月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

上司がとにかく細かいところばかり指摘してくる。取引先の人はいつも気前よく返事するけれど、ちゃんと検討してくれないことがある。そうしたことが積み重なって「あの人、なんとなく苦手だな……」と感じると、ついつい顔を合わせること自体が億劫になるものだ。しかし、その苦手意識は、本当に相手のパーソナリティだけの問題なのだろうか。

長い営業経験のなかで蓄積した確かな技術をもとに著者が磨きあげた対人メソッドは、苦手な人への向き合い方を根本から変える。意識を人からコミュニケーションタイプに向け、スタイルが違っているからうまく歯車が噛み合わないのだ、ということに気づかせてくれる。

相手という“人間”に囚われると、どうしてもイライラが募ってしまう。コミュニケーションタイプの違いだと考えられれば、この本にもたくさん登場する表現だが、「あのタイプなら仕方ない」と割り切ることができる。逆に自分のタイプを認識していれば、なぜ相手を遠ざけてしまいたくなるのかも明快になる。あとは、異なるタイプ同士でうまくやるための“ツボ”を見つけるだけだ。

ベースとなるのは、自分のことを客観的に把握できること、そして、どんな相手でも知ろうとする気持ちである。著者は、初対面で苦手に感じる人であっても、10回は会ってみるという。そうするうちに相手のスタイルが見えてくれば、もう怖いことはない。その著者のあり方に触れるだけでも、自分の人間力が上がっていく気持ちになるから不思議だ。

著者

伊庭正康(いば まさやす)
株式会社らしさラボ 代表取締役。リクルートグループ入社後、法人営業職として従事。プレーヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰を4回受賞。累計40回以上の社内表彰を受け、営業部長、社内ベンチャーの代表取締役を歴任。
2011年、研修会社である株式会社らしさラボを設立。リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(リーダー研修、営業研修、コーチング、講演)を行っている。実践的なプログラムが好評で、リピート率は9割を超え、その活動は『日本経済新聞』『日経ビジネス』『The21』など多数のメディアで紹介されている。Webラーニング「Udemy」でも、時間管理、リーダーシップ、営業スキルなどの講座を提供し、ベストセラーコンテンツとなっている。

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本書の要点

  • 要点
    1
    苦手に感じる原因は、「『相手』にあるのではなく、自身の『評価』でしかない」。
  • 要点
    2
    自分の評価のクセ、相手のパターンを知っておけば、自分の認知を調整したり、トラブルを回避したりできるようになる。
  • 要点
    3
    苦手な人への評価を変えるのに役立つのが、ソーシャルスタイル理論をベースに著者が開発した「相性マトリクス」である。
  • 要点
    4
    とにかく強引にでも、「相性マトリクス」の4つのタイプに当てはめて、問題をシンプルにすることが大切だ。

要約

苦手は認知の問題

苦手なのは相手のせい?

ほとんどの人には、苦手だと感じる相手がいるはずだ。しかし、その人は誰にとっても「苦手な人」というわけではない。苦手に感じる原因は、「『相手』にあるのではなく、自身の『評価』でしかない」のだ。自分が好きになれない音楽を好きになる人がいる。これは音楽が悪いわけではない。人も同じだ。

「あなたの前に苦手な人がいても、見方を変えると、違った評価になる可能性がある」ということである。

本書では、この見方を変える方法について、具体的に紹介していく。

認知のゆがみに気づく
RYGERSZEM/gettyimages

相手への評価を適切に変えていくには、自分の評価のクセを知る必要がある。認知行動療法の創始者であるアメリカの医学博士、アーロン・T・ベック氏は、この評価のクセを「認知のゆがみ」と呼ぶ。

苦手な人や困った人が認知のゆがみから生まれているなら、そのゆがみを矯正すればよい。認知のゆがみは、自動思考とスキーマによって生じる。自動思考は「瞬時に心に浮かぶ思考やイメージ」で、瞬間的な感情などによる判断が誤解につながってしまう。スキーマは「人生のさまざまな体験から構築された、自動思考のもとになる価値観や評価の基準」だ。「約束を守らない人は信用してはいけない」という家庭と、「約束は守れない場合もある」という家庭では、そこで育つ子どものスキーマが大きく違ってくる。

こうしたことはふつうは簡単に変えられないが、ストレスコーピングによって認知のゆがみをフラットな状態にできるのだ。

怒りっぽい「べき思考」

本書では、代表的な認知のゆがみとして、「べき思考」「完璧思考」「読み過ぎ思考」「マイナス思考」の4つを挙げている。ここではそのうち2つを取り上げよう。

まずは、怒りっぽくなりがちな「べき思考」だ。これは、「『〜すべき』『〜であるべき』と考える傾向が強いタイプ」を指す。自他の区別なく自分の尺度での評価を押しつけてしまい、軋轢を生みやすい。

「優先席は空けておくべき」「エスカレーターではきちんと並ぶべき」といった正義感からくる考えも、悪気なく攻撃的になりがちだ。「時間は厳守すべき」というスキーマがある人は、待ち合わせに遅れないよう他の予定を調整し、早歩きでその場所に向かう。言い訳しながらいつも10分程度遅れてくる人がいたら、イライラして、そういう人とは縁を切ろうとまで考えてしまうだろう。

そこで、「時間厳守のスキーマがあるので、自分は特殊」であると認知のゆがみを俯瞰できれば、理性のブレーキをかけて、「縁を切るなんて、さすがに行きすぎだ」と思い直すことができるはずだ。

自分を責めがちな「マイナス思考」

もう1つの認知のゆがみは、出来事の悪い面ばかりを見てしまう「マイナス思考」である。「悪いのは自分のせいだ」「自分の力不足だ」と自分自身を責めがちで、ストレスを溜めやすい。

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要約公開日 2025.03.13
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