キーエンス流 性弱説経営
キーエンス流 性弱説経営
人は善でも悪でもなく弱いものだと考えてみる
キーエンス流 性弱説経営
出版社
出版日
2024年12月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「今月も未達成でした。力及ばず申し訳ございません」「どうして先方の予算を聞いてこないんだ! いつも口酸っぱく言っているじゃないか」「Aさんは目標設定が甘いから、いつも達成するよね。こっちは高い目標を課せられているのに不公平」――どれも一般的な会社でよく聞かれる言葉だろう。だがキーエンスでは、こうしたことが起こらない。その理由は、キーエンスが常に高収益を上げられる理由と直結している。

キーエンス出身の著者、高杉康成氏は本書の冒頭で、キーエンスと他社の最大の違いは「性弱説」にあると指摘する。性弱説とは、人は本来弱い生き物であり、目先の簡単な方法を選んでしまうという捉え方だ。一方、一般的な企業は「性善説」で動いており、人はみな本来善人であって、正しく指示すれば何でもできると考える。

キーエンスでは、難しい仕事を任せるとき、「できないかもしれない」という性弱説視点で考え、その仕事がうまくいく仕組みを用意する。たとえば「どうして先方の予算を聞いてこないんだ! いつも口酸っぱく言っているじゃないか」が起こらないのは、「何度伝えても、部下は先方の予算を聞いてこないかもしれない」と考え、商談の「前」にロールプレイングをし、商談内容を指導しているからだ。

本書は、セールスに限らず、あらゆる職種で使える普遍的な考え方と再現性あるノウハウを教えてくれる。仕事を円滑に進め、チームとして成果を出したいすべてのビジネスパーソン必読の一冊だ。

著者

高杉康成(たかすぎ やすなり)
コンセプト・シナジー代表。経営学修士(MBA)。中小企業診断士。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を務めた。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる

本書の要点

  • 要点
    1
    キーエンスで大きな成果が出るのは、仕事に対するアプローチが性弱説的だからだ。難しい仕事を任せるとき、「できるだろう」と楽観視するのではなく、「できないかもしれない」という性弱説視点で「任せた仕事をできる確率を高めるにはどうすればいいか」を考える。
  • 要点
    2
    キーエンスでは様々な仕事に対して、性弱説的な見方で仕組みをつくり込んだ上で、それらを形骸化させない仕組みも用意している。

要約

【必読ポイント!】 キーエンスと他社の最大の違い

性善説か、性弱説か
anyaberkut/gettyimages

キーエンスと他社の最大の違いは「性弱説」で動いているか否かだ。

多くの企業は性善説で動いている。性善説とは、人はみな本来善人であり、「正しく聞けば、正しいことを話してくれる」「正しく指示すれば何でもできる」「常識的なことはみんな分かっている」というような考え方だ。具体的には「ある程度のマニュアルを作れば、それを守って動いてくれる」「仕事をきちんと頼めば、ちゃんとやってくれる」「スケジュールを明示したら、きちんと守ってくれる」と考える。

一方の性弱説では、人は本来弱い生き物であり、「難しいことや新しいことを積極的にはやりたがらない」「目先の簡単な方法を選んでしまいがち」と捉える。具体的な例を挙げると「ちゃんとしたマニュアルを作っても、その通り動いてくれない人がいる」「仕事をきちんと頼んでも、抜けや漏れが出てしまう」「スケジュールを明示しても、なかなかその通りに進まない」といった捉え方である。

「人は特別なこと以外は何でもできる」という前提に立つか、それとも「人は思っているよりもできないことが多い」という前提に立つか。これが「性善説」と「性弱説」の違いだ。

キーエンスで大きな成果が出るのは、仕事に対するアプローチが性弱説的だからだ。難しい仕事を任せるとき、「できるだろう」と楽観視するのではなく、「できないかもしれない」という性弱説視点で「任せた仕事をできる確率を高めるにはどうすればいいか」を考える。この差が、結果に大きな違いを生んでいるのだ。

「ニーズが集まらないかもしれない」をカバーする仕組み

キーエンスが高収益を生み出す理由の一つに、「世界初、業界初の新商品が70%に達する」がある。これが実現するのは、性弱説に基づいて商品開発をしているからだ。

キーエンスには、顧客のニーズを営業担当者が集める「ニーズカード」という仕組みがあり、全社で毎月、数千枚のニーズカードが集まる。大量のニーズカードが集まるのは、「ニーズが集まらないかもしれない」という性弱説に立ち、ニーズカードを提出しないと人事評価でマイナス評価がついたり、良いニーズには「ニーズカード賞」として賞金が出たりする仕組みを用意しているからだ。

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要約公開日 2025.03.19
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