社員がメンタル不調になる前に
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社員がメンタル不調になる前に
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2024年06月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタル不調が原因で1ヶ月以上の休職または退職をする人は、全事業所の10%以上にのぼるのだという。明確に「メンタル不調」とわかっているだけでこの数なのだから、「メンタル不調予備軍」まで含めれば相当数いることは容易に想像できる。社会が複雑化してストレスフルな現代では、働く人のほとんどが、大なり小なりメンタルに不安を抱えているのだろう。

しかし実際、病院でメンタル疾患と診断されるほど悪化してしまうと、「治す」のはとても大変なのだという。再発の可能性も高いため、病気とは一生のつき合いになる。だからこそ、メンタル不調に陥る「前に」相談することが大切なのだと著者は主張する。

著者は、法人向けオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」の設立者・藤田康男氏だ。大手からスタートアップまで数多の企業に対応してきた経験から、社員が会社に相談できない理由、安心して相談できる場やシステムづくりの基本、相談を受ける際の心構えなどを解説する。

本書によれば、会社が社員にとって第一のコミュニティだった時代は終わり、会社にとっても社員は「人的資本」となった。会社は社員という「資本」のパフォーマンスを最大限に引き出すためにも、多様な価値観に基づいたサポートを模索しなければならないと著者は主張する。社内のサポート体制づくりについて、重要な視点を与えてくれる一冊だ。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

藤田康男(ふじた やすお)
株式会社Smart相談室 代表取締役・CEO
関西学院大学総合政策学部、一橋大学大学院 商学研究科 経営学修士コース(MBA)卒業。
医療系事業会社で事業開発、組織マネジメントに従事。その経験から従業員の成長に課題感を持ち、2021年2月株式会社Smart相談室を設立。これまでのマネジメント経験から、従業員のメンタル不調に関して課題感を持ち、独自の視点から、課題に対するソリューション「Smart相談室」を提供中。働く人の「モヤモヤ」を解消し、「個人の成長」と「組織の成長」を一致させることで社会に貢献したいと考えている。

本書の要点

  • 要点
    1
    メンタル不調が原因で休職・退職する人は全事業所の10%以上にのぼる。年収480万円の社員が1名退職した場合、単純計算で1104万円の損失となる。企業にとって社員を退職させないことは重要な課題であり、メンタル不調を未然に防ぐ努力が必要だ。
  • 要点
    2
    企業は社員の安全と健康に配慮する義務がある。社員のメンタル不調の原因がプライベートなものだったとしても、会社として対応しなければならない。
  • 要点
    3
    社員の相談に乗る際は、真摯に相手の話に耳を傾けよう。悩みを解決しようとする必要はない。

要約

企業が抱える「メンタル不調」問題

社員1名の退職は1104万円の損失

厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタル不調が原因で1ヶ月以上の休職、または退職をする人は全事業所の10%以上にのぼるという。メンタル疾患予備軍も含めれば、相当な数の人がメンタル不調を抱えていると考えられる。

年収480万円の社員が1名退職した場合、労働の付加価値や売上減などを計算すると、単純計算で1104万円の損失となる。これに加え、入社時の面接コストや育成コストなどがかかってくるため、損失はさらに大きくなる。企業にとって、社員を退職させないことは非常に重要だ。

企業では産業医との契約やストレスチェックなどさまざまな対策を講じているが、状況は芳しくない。メンタル疾患者は年々増え続けており、突然辞めてしまう社員もあとを絶たない。企業はメンタル不調との付き合い方を真剣に変えるべき時期に差し掛かっている。

自分ではメンタル不調に気付けない
PeopleImages/gettyimages

メンタル不調の難しい点は、自分では不調に気付けないことである。ほとんどのメンタル不調者は、周りから声をかけられて初めて自分が「病気」だと気付く。個人の力でメンタル疾患に陥らないようにするのは、不可能だといっていい。

また、多くの人は「困難を乗り越えること」を「善」とする価値観を持っている。つらくても無理をして取り組んでしまうことが多いし、周囲もそんな人を応援してしまう傾向がある。そのような雰囲気も、知らず知らずのうちに人を「健康」から「病気」へと追いやってしまう要因である。

「健康」と「病気」の境界を知る手段として、医療機関の受診がある。しかし、医療機関の役割は「病気である判断をすること」と「病気の治療をすること」だ。そのため、状態が悪くなり、病名がつくまでは基本的に何もしてくれない。

また、メンタル不調は風邪のように自然に治ったりはしない。治ったとしても、一生その病気と付き合っていくことになる。メンタル不調で休職し、治療を終えた社員の約5割が再発し、再び休職に至るという調査結果もある。しかも、2回目は1回目よりも休職期間が1.5倍長くなるという。

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要約公開日 2025.03.21
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