ニコニコ哲学

川上量生の胸のうち
未読
ニコニコ哲学
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川上量生の胸のうち
未読
ニコニコ哲学
ジャンル
出版社
出版日
2014年11月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

KADOKAWA・DWANGOの代表取締役会長として活躍する川上量生氏。常識にとらわれない、突き抜けた世界観と鋭い洞察力を持つ、独特の存在感のある人物であり、彼を「変わった人」や「不思議な人」として捉える人は少なくないという。本書は、そんな川上氏の歯に衣着せぬ発言とユニークな思想が散りばめられた一冊である。メディア論やクリエイティブ論から国家論、人類の未来、といった幅広いテーマについて、川上氏が本音で語る。中には読者が心配になってしまうほどストレートな発言も多く、その出し惜しみのなさが非常に魅力的である。

「当たり前だと思っていることは、本当に当たり前か?」――本書を読むことによって、そのような考えが頭に浮かぶ。全編対談方式で展開され、川上氏の親しみやすい語り口とインタビュアー加藤氏との軽快なやり取りでスラスラと読めてしまうが、内容は深く、考えさせられることが多い。「女子マネ弁当」や「しょうがない、と思われるポジション」など、今までにない斬新な発想も次々と登場する。一方で、「何がやりたいか」という質問に対して「もっと寝たい」と、どこまでが本気なのか冗談なのか分からない答えをするなど、読者の笑いを誘う場面も少なくない。

新しい視点や、発想の転換を求める人々にとって、ヒントになることが多くあるだろう。是非一度手に取って読み進めて頂きたいと思う。

著者

川上量生 (かわかみ のぶお)
株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長、株式会社ドワンゴ代表取締役会長。株式会社角川アスキー総合研究所主席研究員。1968年生まれ。京都大学工学部を卒業後、コンピューターの知識を生かしてソフトウエアの専門商社に入社。同社倒産後の97年、PC通信用の対戦ゲームを開発する会社としてドワンゴを設立。2000年に代表取締役会長に。03年に東証マザーズ上場、翌年に東証1部に市場変更。独自の発想で携帯ゲームや着メロなどのサービスを次々とヒットさせるほか、06年には、子会社のニワンゴで「ニコニコ動画」を開始。その後も「ニコニコ超会議」や「ブロマガ」など、数々のイベントやサービスを生み出している。

本書の要点

  • 要点
    1
    iTunesなどの大手のプラットフォームは、コンテンツの値下げによってユーザー増加を図っている。しかし、それはコンテンツの質を落とすことにもつながる。プラットフォームとコンテンツの両方を提供するモデルが必要。
  • 要点
    2
    ネットサービスを運営する上で、自由度を確保することはとても重要なことである。そのために「この会社だったら、しょうがないな」というポジションを得たいと考えている。
  • 要点
    3
    ニコニコ動画の掲げる目標、「ニコニコ宣言」には、システムの中でも人間性を追求し続けていくという、ドワンゴのビジョンが描かれている。

要約

KADOKAWAとドワンゴの経営統合

「わからない」ものこそおもしろい
porcorex/iStock/Thinkstock

2014年10月に経営統合したKADOKAWAとドワンゴだが、誰しもその経営統合の真の狙いをよく理解できない状況にある。それもそのはず、川上氏自身が「よくわからない」と、冗談なのか本気なのかわからない調子で述べるのである。

しかし、川上氏の独自の理論によると、みんなが何をすれば良いのかわからない状況だということは、競争相手もいないため、独自のポジションを確立できる、ということだ。また、よくわからない方がやれることが色々あり選択肢が広がる、という。その「おもしろさ」に可能性を見出し、KADOKAWAとドワンゴの経営統合に踏み切った。誰もが「こういう理由で経営統合したのだろう」とすぐ予測できるのではおもしろくなく、2、3年経ったあとに「なるほど、こういうことだったのか!」となることの方が楽しい。そんな意外な結果を導き出すことは必ずしも簡単ではないが、「むずかしいけれどおもしろい、やる気を出すに値するパズル」として意欲的に取り組む。それが、川上氏の姿勢なのだ。

コンテンツを「スーパーの特売の卵」にしない

KADOKAWAとドワンゴの経営統合にあたって、「コンテンツ・プラットフォームを両方提供するモデルがベスト」と記者会見で発言した川上氏。

アマゾンがKindle版の本の価格を値下げしたように、iTunesやAppStore、GooglePlayなどの海外の大手プラットフォームは、コンテンツの値下げをすることで、ユーザーを増加させる戦略をとっている。しかし、そうすることでコンテンツのつくり手は厳しい状況におかれ、質の良いコンテンツをなかなか制作できない事態となっている。

一方、たとえば、プラットフォームもコンテンツも自社で提供する任天堂は、コンテンツの値下げをせず、ゲーム機本体を安く売った。そのため、良いゲームがつくられ続け、結果ゲーム業界で勝利を収めた。

プラットフォームとコンテンツの両方を提供することは大変ではある。しかし、「誰もやらない大変なことにこそビジネスチャンスがある」と川上氏は言い、これまで簡単なことばかりしようとしてきたIT業界に苦言を呈す。「徒労に終わらないような大変なことを探す」ことがこれからのIT業界に求められている。

【必読ポイント!】CTO(最高技術責任者)としてこう考える

女子マネ弁当による改革
DAJ/Thinkstock

成果さえ出していれば好きなようにしていい、という自由な勤務体系のため、ドワンゴでは一時期、午前中に出社するエンジニアは、300人中10人と著しく少なくなってしまった。そこで、川上氏はCTOとして、エンジニア向けに「女子マネ弁当」という企画を発案する。

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要約公開日 2015.03.24
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