2014年10月に経営統合したKADOKAWAとドワンゴだが、誰しもその経営統合の真の狙いをよく理解できない状況にある。それもそのはず、川上氏自身が「よくわからない」と、冗談なのか本気なのかわからない調子で述べるのである。
しかし、川上氏の独自の理論によると、みんなが何をすれば良いのかわからない状況だということは、競争相手もいないため、独自のポジションを確立できる、ということだ。また、よくわからない方がやれることが色々あり選択肢が広がる、という。その「おもしろさ」に可能性を見出し、KADOKAWAとドワンゴの経営統合に踏み切った。誰もが「こういう理由で経営統合したのだろう」とすぐ予測できるのではおもしろくなく、2、3年経ったあとに「なるほど、こういうことだったのか!」となることの方が楽しい。そんな意外な結果を導き出すことは必ずしも簡単ではないが、「むずかしいけれどおもしろい、やる気を出すに値するパズル」として意欲的に取り組む。それが、川上氏の姿勢なのだ。
KADOKAWAとドワンゴの経営統合にあたって、「コンテンツ・プラットフォームを両方提供するモデルがベスト」と記者会見で発言した川上氏。
アマゾンがKindle版の本の価格を値下げしたように、iTunesやAppStore、GooglePlayなどの海外の大手プラットフォームは、コンテンツの値下げをすることで、ユーザーを増加させる戦略をとっている。しかし、そうすることでコンテンツのつくり手は厳しい状況におかれ、質の良いコンテンツをなかなか制作できない事態となっている。
一方、たとえば、プラットフォームもコンテンツも自社で提供する任天堂は、コンテンツの値下げをせず、ゲーム機本体を安く売った。そのため、良いゲームがつくられ続け、結果ゲーム業界で勝利を収めた。
プラットフォームとコンテンツの両方を提供することは大変ではある。しかし、「誰もやらない大変なことにこそビジネスチャンスがある」と川上氏は言い、これまで簡単なことばかりしようとしてきたIT業界に苦言を呈す。「徒労に終わらないような大変なことを探す」ことがこれからのIT業界に求められている。
成果さえ出していれば好きなようにしていい、という自由な勤務体系のため、ドワンゴでは一時期、午前中に出社するエンジニアは、300人中10人と著しく少なくなってしまった。そこで、川上氏はCTOとして、エンジニア向けに「女子マネ弁当」という企画を発案する。
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