組織とは人の集まり、つまり「集団」だ。人は日々、会社や組織、あるいは学校や友達グループなど、集団の中で過ごしている。その恩恵の最も大きなもののひとつは、ひとりではできない仕事ができることだ。集団で力を合わせて協力することで、より大きな成果を生み出すことができ、また困ったときには仲間から助けてもらうこともできる。
一方で、集団ならではの短所を経験したことがある人も多いはずだ。「会議で誰も本音を言えず、正しくない結論に決まってしまう」「他人任せでまじめに働いていない人がいる」「話し合いは盛り上がったのに、大したアイデアが出ない」「チームがうまく連携できず、仕事がいつも止まり気味」――。こうした問題は、ひとりで働いていては出てこない、みんなで一緒に働くからこそ生まれてくる問題だといえる。
こうした問題の背景には、群れをなして暮らすという私たち人間が持つ“集団心理”の特性が深く関わっている。ひとつひとつの組織はさまざまであっても、その根源には集団心理と、そこから生じる集団の課題がある。
こうした問題を解決しようと研究されてきたのが、社会心理学や産業・組織心理学といった分野である。こうした分野の知見を用いることで、集団がどのように機能しているのかをよりよく理解することができる。
賢い人が集まっているのに、ばかげた結論を出してしまう――。これは集団心理のひとつ、「集団浅慮」という現象だ。
集団浅慮とは、集団のまとまりを追求するあまり、非合理で未熟な意思決定をしてしまう状態を指す。優れた人たちが集まっていても、集団になると浅はかな考えにとらわれてしまうことは少なくない。
その例のひとつに、1986年に起こったスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故がある。チャレンジャー号は、打ち上げ後わずか73秒で爆発し、乗組員全員が犠牲になった。
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