エッセンシャル思考は、「正しいことをやり遂げる技術」である。大事なことを見極め、自分の時間とエネルギーを最も効果的に配分し、最大の成果を上げるのが狙いだ。
じつは、優秀な人ほど、「自分の目指す方向性がわからない」という成功のパラドックスに陥りやすい。成功を目指して進んだ結果、「頼れる人」という評判を得て、多様な仕事を振られるようになる。それらを引き受けた挙句、時間とエネルギーが拡散され、やるべきことができず、本来の方向性を見失ってしまうからだ。
なぜこのような事態になってしまうのか? それは、選択肢が多すぎ、選択の機会が増えすぎて正しい決断ができなくなるからだ。また、他人からの口出しの影響力が大きく、「全部やろう」という風潮が世の中に広がってしまっているのも要因の一つだ。
成功と充実感を得るためには、大事なこと以外を断り、本当に重要なことに集中しなければならない。そうすれば、質の高い仕事ができる。
エッセンシャル思考を身につけるには、その基礎となる3つの考え方を理解することが不可欠だ。
まずは「選択」。自分には何に時間とエネルギーを使うか、選ぶ力があるということだ。
次に、「ノイズ」。大多数のものごとは不要だ。「少数の重要なチャンス」を選べば、見返りは非常に大きい。
最後に、「トレードオフ」。本当に重要なことにイエスと言うには、その他全てにノーと言わなくてはいけない。「何かを選べば、必然的に何かを捨てることになる」。トレードオフは、往々にしてどちらの選択肢も捨てがたいために痛みを伴うが、選択肢の比較検討において、自分の本当の望みを明確にする絶好のチャンスでもある。
本当に重要なものごとを見極めるために必要なのは次の5つである。じっくりと考える余裕、情報収集の時間、遊び心、十分な睡眠、そして何を選ぶかという厳密な基準だ。
忙しく動きまわることを有能さの証だと思っている人は、熟考や睡眠時間を減らそうとする。しかし、エッセンシャル思考の人は、時間をかけて多くの選択肢を調査・検討し、意見を交わし、じっくりと考えることで真に重要なものを見極める。
多数の瑣末なことの中から少数の重要なことを見分けるには、誰にも邪魔されない時間が不可欠だ。エッセンシャル思考の人は、目の前の選択肢にすぐ飛びつかず、調査と検討に時間をたっぷりかける。
考える余裕をもつには、集中せざるを得ない状況に身を置くことが大切だ。例えばLinkedIn(リンクトイン)のCEOであるジェフ・ワイナーは、毎日合計2時間の空白をスケジュールに組み込んでいる。その時間に、会社の将来像やサービス改善方法といった本質的な問題を考えるようにすることで、生産性がアップし、人生の主導権を取り戻せたと言う。
1年に2週間でも、毎朝5分でも、じっくり考えられる時間を確保しよう。
情報の核心をつかむには、ささいなことにとらわれ過ぎず、大局を見ることが必要だ。「語られない内容」にも耳を傾け、不要なノイズの中から情報をフィルタリングしなくてはいけない。本質を見抜く目を養うには次のような方法が効果的である。
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