ゼロ

なにもない自分に小さなイチを足していく
未読
ゼロ
ゼロ
なにもない自分に小さなイチを足していく
未読
ゼロ
出版社
ダイヤモンド社
出版日
2013年10月31日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは「堀江貴文」について、どのようなイメージをお持ちだろうか。2004・05年の時点では「時代の寵児」と持ち上げる声と「拝金主義のヒルズ族」と非難する声に評価は二分していたように思う。しかし、2006年1月に証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決を受けてからというもの、彼は表舞台からその姿を消した。結局、彼の考え方を真正面から捉えた議論はなされないままになってしまったのではないか。

本書の冒頭でも述べられている通り、彼のお金に関する信念や人生観は収監された前後で全く変わっていない。唯一変わったのはコミュニケーションに対する考え方であり、これは彼自身、過去の自分における最大の反省点だったと語っている点である。すなわち、メディアを騒がせた「ホリエモン」という人物像に我々も彼自身も踊らされてしまっていた、ということだろう。故に本書ではこれまで明かされてこなかった彼の半生が鮮やかに描かれている。

本書は堀江氏が「働くこと」について自身の考えを述べた一冊だ。終身雇用に限界が見え、自由な働き方を模索する人が増えた今だからこそ、「働き方」というテーマについて我々は議論を尽くさねばならない。そのためにも「ホリエモン」ではなく「堀江貴文」としての彼を正しく捉え、改めて彼の意見に耳を傾けてみてはいかがだろうか。

ライター画像
苅田・片倉

著者

堀江 貴文
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。民間でのロケット開発を行うSNS株式会社ファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときに、インターネット関連会社の有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から05年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補などといった世間を賑わせる行動で、一気に時代の寵児となる。既得権益者と徹底的に戦う姿が若者から支持を集め、『稼ぐが勝ち』(光文社)がベストセラーに。しかし2006年1月、33歳のときに、証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2011年6月に収監され、長野刑務所にて服役。介護衛生係としての仕事に励みつつ、メールマガジンなどで情報発信も続け、獄中で40歳の誕生日を迎える。2013年3月27日に仮釈放。本書が刊行される直後の11月10日0時に刑期を終了し、ふたたび自由の身となって、「ゼロ」からの新たなスタートを切る。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書ではかつてメディアを騒がせた「ホリエモン」ではなく、著者の考えを理解してもらうために「堀江貴文」という人間について、その半生が包み隠さず描かれている。
  • 要点
    2
    本書では、堀江氏が唱える「掛け算によるショートカット」の前提である、「足し算」部分が語られている。ゼロの状態から始めるときには、まずはゼロをイチにしなければならない。信用の「ゼロからイチ」は、まず自信を持つところからはじまる。
  • 要点
    3
    人生の中で、仕事はもっとも多くの時間を投じるもののひとつであるにもかかわらず、それが我慢の時間になってしまっているのは間違っている。人は自らの生を充実させるために働くべきだ。

要約

メディアを騒がせた「ホリエモン」ではなく、「堀江貴文」という人間

失墜と復活の繰り返し

本書の前半部(第1・2章)は、これまであまり語られてこなかった「堀江貴文」の人物像が描かれている。幼少期から今に至るまで、コンプレックスにまみれた過去も包み隠さず語られている。

堀江氏の半生は失墜と復活の繰り返しだ。何かに失望し堕落するが、ふとしたきっかけで再起し一気にハマっていく。そしてまた全てを失ってゼロに戻る。まずは、収監され三たびゼロに戻ってしまった堀江氏のこれまでを振り返ってみたい。

iStock/Thinkstock
人生を変えた「恩師」との出会い

堀江氏の母親は随分と「激しい」性格だ。有無を言わさず言うことをきかせる。小学生の頃は柔道も強制的にやらされていた。柔道のおかげで友達と遊ぶこともできず、テレビの話題にもついていけない。彼は自身の環境に苛立ちを感じていた。

そこに、はじめての理解者が現れる。小学3年生時の担任、星野先生だ。先生は、彼の生意気なところ、面倒くさいところ、そして不器用なところを、すべておもしろがり、ほめてくれた。そして彼は、公立中学に進むのではなく、久留米にある中高一貫の私立校、久留米大学附設中学校に行きなさい、という先生のアドバイスに従った。

中学に上がり、彼はその後の人生を決めたといっても過言ではない、コンピュータと出会った。初心者用のパソコンでは飽き足らず、彼は新聞配達のアルバイトで貯めたお金で本格派のパソコンを購入、ますますコンピュータの世界にハマっていく。プログラミングを武器に、英語スクールのシステム移植も成功させた。しかし、インターネット登場以前のあまりにもマニアックな当時のパソコンの世界に徐々に失望し、彼はそこからも離れていった。それまでパソコンに費やされていた時間は、享楽的な遊びの時間へと切り替わり、ちっぽけな自尊心さえ残されていないゼロの状態となってしまう。

そんな自分の状態にうんざりしていた彼は、とにかくその状況を脱出することを考えた。そのためにはどうしても東京に行きたかった。親を説得するに足る材料は東大に合格するしかない。そして今度は受験勉強にハマるのだ。何事もハマってしまえば楽しくなるというのが彼のスタンスだ。1991年の春、彼は現役で東京大学に入学した。

Fuse/Thinkstock
小さな成功体験を積み重ねる

彼が東京での住み処に選んだのは、キャンパス内にある駒場寮。そして幸か不幸か、彼は「麻雀部屋」に入寮した。彼は幼少期からの麻雀好き。やらないわけにはいかない。麻雀を打ちながらポスドクの先輩から、研究者の道には嫉妬や派閥争いなどのドロドロした権力闘争が待っている現実を聞かされ、彼は東大に幻滅していった。そして、どこにでもいる堕落しきった大学生となった。

恋愛はどうだったのかというと、彼はまったくモテなかったようだ。中高6年間を男子校で過ごしたこともあり、女の子に対する免疫はゼロ。声をかけようとした途端、全身が固まってしまう。彼は近鉄バファローズの買収騒動でメディアに大きく採り上げられた2004年あたりでも、女の子にまだキョドっていたらしい。

そんな彼の殻を打ち破ることができたきっかけは、大学時代に経験したヒッチハイクの旅だという。

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要約公開日 2013.11.06
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