本書の前半部(第1・2章)は、これまであまり語られてこなかった「堀江貴文」の人物像が描かれている。幼少期から今に至るまで、コンプレックスにまみれた過去も包み隠さず語られている。
堀江氏の半生は失墜と復活の繰り返しだ。何かに失望し堕落するが、ふとしたきっかけで再起し一気にハマっていく。そしてまた全てを失ってゼロに戻る。まずは、収監され三たびゼロに戻ってしまった堀江氏のこれまでを振り返ってみたい。
堀江氏の母親は随分と「激しい」性格だ。有無を言わさず言うことをきかせる。小学生の頃は柔道も強制的にやらされていた。柔道のおかげで友達と遊ぶこともできず、テレビの話題にもついていけない。彼は自身の環境に苛立ちを感じていた。
そこに、はじめての理解者が現れる。小学3年生時の担任、星野先生だ。先生は、彼の生意気なところ、面倒くさいところ、そして不器用なところを、すべておもしろがり、ほめてくれた。そして彼は、公立中学に進むのではなく、久留米にある中高一貫の私立校、久留米大学附設中学校に行きなさい、という先生のアドバイスに従った。
中学に上がり、彼はその後の人生を決めたといっても過言ではない、コンピュータと出会った。初心者用のパソコンでは飽き足らず、彼は新聞配達のアルバイトで貯めたお金で本格派のパソコンを購入、ますますコンピュータの世界にハマっていく。プログラミングを武器に、英語スクールのシステム移植も成功させた。しかし、インターネット登場以前のあまりにもマニアックな当時のパソコンの世界に徐々に失望し、彼はそこからも離れていった。それまでパソコンに費やされていた時間は、享楽的な遊びの時間へと切り替わり、ちっぽけな自尊心さえ残されていないゼロの状態となってしまう。
そんな自分の状態にうんざりしていた彼は、とにかくその状況を脱出することを考えた。そのためにはどうしても東京に行きたかった。親を説得するに足る材料は東大に合格するしかない。そして今度は受験勉強にハマるのだ。何事もハマってしまえば楽しくなるというのが彼のスタンスだ。1991年の春、彼は現役で東京大学に入学した。
彼が東京での住み処に選んだのは、キャンパス内にある駒場寮。そして幸か不幸か、彼は「麻雀部屋」に入寮した。彼は幼少期からの麻雀好き。やらないわけにはいかない。麻雀を打ちながらポスドクの先輩から、研究者の道には嫉妬や派閥争いなどのドロドロした権力闘争が待っている現実を聞かされ、彼は東大に幻滅していった。そして、どこにでもいる堕落しきった大学生となった。
恋愛はどうだったのかというと、彼はまったくモテなかったようだ。中高6年間を男子校で過ごしたこともあり、女の子に対する免疫はゼロ。声をかけようとした途端、全身が固まってしまう。彼は近鉄バファローズの買収騒動でメディアに大きく採り上げられた2004年あたりでも、女の子にまだキョドっていたらしい。
そんな彼の殻を打ち破ることができたきっかけは、大学時代に経験したヒッチハイクの旅だという。
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