子どもの頃は何になるか考えていなかった。高校生の時、母親に「将来なりたいものは?」と聞かれ、「大物」と答えた。小中学校時代は、スポーツも勉強も全部中途半端となっていた。何かをやってはすぐに別のものに興味が移る、超分散型だった。
瞬間的な反応は異常に強いが、計画性や段取りを覚える力がないと認識している。友達とはしだいに距離ができ、高校時代は孤立し、ケガも多く10本ほど骨も折っている。大人になった今でも転んだり、火傷したり、プールに落ちたりすることが頻繁にある。
勉強も得意ではなかったが、不意にものすごく集中する瞬間に入る時があった。例えば、黒板の先生の字で「しんにょう」の部分が格好よかったら、もうそれしか目に入らず、ノートにそれを書き写しまくる。何かに没頭すると周りが見えなくなる傾向があり、それがどのタイミングでやってくるか、自分ではわからない。自分の意思で継続して、没頭できたのは書道だけかもしれない。
書道では、教室の生徒に笑われるくらい、よく墨汁をこぼす。でも、書を書いている時の集中力はすごく、周りのことがまったく気にならない。時間もわからなくなる。
サイン会では300人ぐらいのお客さんにサインするが、ひとりも名前を間違えたことがない。自分でも、なぜそこまで集中できるかわからない。
そんな人生を過ごしているが、物事はことごとく全部うまくいっている。人間関係のトラブルもない。「問題」という事態にも、ほとんど直面したことがない。
世間の価値観では、何かに向かって山を登り頂上まで行った人が成功者だととらえられるが、武田氏は、山を一切登らず、走らないし、競争もしない。その瞬間、瞬間を生き切ることに集中している。
高校時代に話を戻すと、熊本の進学校に通っていたが、有名大学へ行ける学力はなく、東京理科大も模試ではE判定だったが、入試では予想が的中して現役合格。意外に慎重派だから、何かやるときはいつも失敗しないという確信を持って臨む。安定を保ちながら、無駄なことをしないでいると、失敗は避けられるものだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる