まず、水商売におけるクラブとキャバクラの違いについて、少しふれておこう。
水商売の代表的なものであるこれら二つは、似て非なるものである。キャバクラは、日によって客が違う女の子を「本指名」できる。「本指名」をもらうと売上ポイントがたくさんつくため、キャバ嬢は指名してくれる客を狙い、キャバ嬢同士で奪い合う。スリリングな状況を楽しむ客が通うという。クラブは、永久指名制である。初回でついたホステスが、その後もつくことになるので、客を退屈させずに客をリピートさせる技術が必要になる。
女の子を変えて楽しむことも、女の子同士の争いを面白がることもできない高級クラブにおいて、ママたちが持っているのは「嫌われない技術」である。下手に好かれようとせず、自分は余計なことはしない。ヘルプの女の子たちを呼んで、客が誰かを気に入れば、その子と客との会話を盛り上げて次につなげる。
映画界や芸能界でも息が長いのは脇役である。指名され続けるための秘訣は、主役を食わずに空気を読む脇役にある、と著者はいう。コンピュータ・ゲーム業界でも、良いゲームは勝手に動き出すゲームではなく、「召使のように主人の言葉を待つ『耳』が発達している」ゲームだという。そういうゲームに人々はハマるのだ。
自分に固執せず、クライアントに主役を張ってもらうこと。商品においては、完成に至る最後の1ピースを、客によって埋めさせること。それが、クライアントや客に当事者意識を芽生えさせ、リピートさせる要因になる。
人を動かす強い力は、前述のような「当事者意識」や「共犯意識」にある。成長著しい企業のCMに注目してみると、消費者や社員に対してそうした意識を喚起するものが多いことに気づくはずである。
プロのホステスは、この「共犯意識」を演出して関係をつくる術に長けている。銀座の一流店のHさんというホステスのお姉さんは、堀藤さんが銀座に通うようになった始めのころから、銀座の手ほどきをしてくれた存在だという。
3,400冊以上の要約が楽しめる