リーダーとして新しい部署に着任してまずやるべきことは、その職場の「キーマンは誰か、チームはどういうカルチャーか」を知ることだ。キーマンと一番の仲間になれるか、信頼関係をつくれるか、ということが今後のチームづくりに大きく影響する。ミーティングの場でメンバーの言葉や聞く姿勢を注意深く観察すれば、メンバーが何を考えて、誰のため、何のために行動しているか、そしてメンバー間の力学を知ることができる。
メンバーのことがわかれば、仕事の頼み方やコミュニケーションがスムーズになる。まずは自分の人となりを伝え、こちらからオープンになれば、メンバーも心を開いてくれる。その後、1対1の面談を行い、メンバーの性格、課題、大切にしていることを把握するとよい。面談の最後に互いの「フランクな呼び名」が決められるくらいになると、心の距離を一気に縮められる。
「ありがとう」は相手の存在を認める最高の感情表現になる。チームの目的のためにメンバーががんばってくれていることはすべて、ありがたいことだ。小さなことでもどんどん「ありがとう」と言い、メンバーの存在や意志を大切にしよう。
また、リーダーがメンバーを頼ることは、彼らの「役に立ちたい」という貢献欲求を満たすことにもつながる。弱い自分をさらけ出し、メンバーに仕事を頼み、メンバーがいてこそ成果があげられると感謝するリーダーに、人は「ついていきたい」と思うのだ。
信頼関係を築くには「自分がしてほしい」ことを、メンバーに極端に求めないことが大切だ。自分が「よかれ」と思うことを押しつけるのではなく、メンバーのやり方を尊重できると、チームは明るくなり、新しい発想力が生まれる。リーダーが大事にすべきことは、がんばっているメンバーがさらにがんばれる環境を整えることだ。
相手を否定したくなっても、相手の自主的な行動にこめられた想いを大切にし、とにかく肯定し認めていくことがメンバーとの関係を変える。人それぞれに考え方や意見は違っていて当然であり、様々な価値観のメンバーがいるからこそ、課題を解決できるのである。
チーム内で新しいプロジェクトを立ち上げるときは、メンバー自らが参画したいと願い、リーダーがそれを認めて任命する、というプロセスが大切になる。その際に、リーダーは「このプロジェクトの仕事を通してこんな貢献ができる」とメンバーの貢献欲求を満たすような目的を提案するとよい。そうすれば、メンバーに必ず意志が芽生える。
チームとして成果を出していくためには、リーダーは「チームの目的」も初めに明確にする必要がある。目的がわかれば、何を優先すべきか、どんな仕事をすべきなのか、メンバーが自分で考えて行動できる。そして、その目的が壮大なものであるほど、チームは一丸となって進んでいける。
リーダーは事あるごとにメンバーに「楽しい?」と聞いてみよう。言葉だけでなく表情にも注意して、どうしたらメンバーの仕事そのものを「楽しくできるか」にアイデアを出すことに集中しよう。仕事を楽しめればメンバーはポジティブな気持ちになり、不思議なくらいチームの生産性が高まる。
目的のない仕事、成果のイメージが見えない仕事はとくに楽しくない。メンバーが生き生きできない仕事は大事なものでもないし、重要ではない。そんな仕事はリーダーが捨てる勇気を持ち、一度やめてみるとよい。上司や他部署から仕事の依頼があっても、何のためか、誰のためかをまずは自問し、メンバーのためにならないなら断る勇気を持とう。
リーダーの仕事のひとつに、メンバーの育成がある。リーダーがプレイヤー時代の仕事をやってしまっては、メンバーは育たずチームは成長しない。プレイヤー時代とは異なる「任せる能力」を発揮し、メンバーを信じて自分の仕事を任せることは、リーダーが最初に挑戦すべき試練ともいえる。
実際に仕事を任せるときには、「この仕事をやってもらう」という発想から、「メンバーがやりたいと思えるような仕事をつくる」という発想へ転換し、メンバーの「キャリア」や「志」を大切にしながら仕事の割振りを決める。すると、メンバーもやらされた感を感じず、自分の意志で取り組める。仕事を任せたらこちらからこまめに進捗を尋ね、メンバーが最後までやり遂げられるように支援することもリーダーの大切な役割である。
リーダーは「お客様の目線」で仕事を見て、成果を評価しなければならない。たとえ評価が低い場合でも、嘘偽りのない事実を伝え「自分の状況」を理解してもらうことが大切だが、「あと何点足りない」と表現するのではなく「できる」部分を評価してあげよう。人は自分の「できる」部分を自覚すると、さらにその「できる」ところを伸ばそうとし、早く成長する。
メンバーを評価する上では、「自己評価+加点評価」をベースにすることが一番大切である。リーダーは、どこまで貢献できているか、さらに貢献するには何が必要かと問い、メンバーの自己評価を受け止め、加点評価を意識し、メンバーの自己成長のサイクルをつくってあげるべきだ。自分を知ることができれば、自分で自分を成長させる動機が生まれ、能力を高めようと主体的に行動する。
チームの中で権限がなく、能力も思うように発揮できず、周囲からのサポートも受けられていない、という弱い立場の人を、リーダーは必ず気にかけるようにすべきだ。立場の弱い人は、常に不安を抱えているが、リーダーが守ってくれるということが伝われば、安心でき、やる気もわいてくるだろう。その安心感はチームにも伝播し、チームの雰囲気はぐっとよくなる。
さらに、少数派の意見はときに煙たがられがちだが、リーダーは率先してそうした意見に光を当てたい。リーダーの考えに沿った意見ばかりが出るような不合理な集団思考に陥ることを防ぐことができるし、意志をもって発言した少数派の人の気持ちを受け止めてやれる。
リーダーのちょっとした言動は、メンバーの感情に大きな影響をおよぼす。なかでも、「ためいき」「舌打ち」「独り言」には気をつけなければならない。これらはメンバーの感情にネガティブな影響を与え、確実に業績にも影響してしまう。
また、気分で怒る人は信用されなくなるし、感情的に怒鳴る人も、怒鳴られた側に反省するよりも反感の気持ちを植えつけてしまう。リーダーは感情に任せて怒りをぶつけるのではなく、事実をよく見て何が具体的にNGだったのかを伝えるように心がけなければならない。リーダーは感情のコントロール術を学んでおくといい。
メンバーは、経験から学んで成長していく。リーダーがやるべきことは、メンバーにいろいろな経験を積ませ、その経験から何を学んだのか問いかけ、自身に気づきを与えることだ。
とくに、失敗したときの振り返りは多くのことに気づく機会となり、メンバーの中に答えが生まれれば、そのメンバーは必ず成長する。「失敗」は「勉強」と評価し、何度もトライアンドエラーを繰り返すことを奨励しよう。
チームの成果はチームの温度で決まる。ではどんなときにチームの温度が上がるかというと、それは健全な危機感を持ったときだ。つまり、メンバー一人ひとりが、「この状況はまずい、なんとかしなければ!」という気持ちになることが何よりも大切だ。リーダーはチームの危機を自分ごととして捉えられるように、健全な危機感をあおり続ける必要がある。健全な危機感がないチームには、「なんとかなるだろう」という雰囲気が漂っており、これはチームの最大の敵である。どんなことがあっても、リーダーは「なんとかなる」を排除し「なんとかしよう」と言わなければならない。
人の心や感情が要因となる問題は、スキルやテクニックで解決できるものではない。もしもメンバー同士に対立があるなら、リーダーは原因を追求するのではなく「私が責任をとるから、それぞれ話を聞かせて」と二人の間に入って状況に適応していく必要がある。原因を指摘しても、なんの解決策にもならない。
チーム外でも、トラブルが起きるときは、複数の利害関係者が絡んでいて解決が難しいことが多い。このようなトラブルでも大切なのは「信頼」だ。利害関係者を最も大事にして迅速かつ謙虚な姿勢で対応すれば、信頼は取り戻せる。
会社には様々な肩書きを持った人がいて、利害関係者に囲まれて仕事をしている。リーダーは、チームを守るために、強い権限を持った人の思惑や感情に左右されないよう彼らの感情をコントロールして支援者にし、物事がスムーズに進むよう調整することが大切な仕事だ。
権限をもつ人に力になってもらうためには、「助けてください」と素直に頼むことである。一方で、権威を振りかざす人や理不尽な上司とは決して戦ってはならない。このような人は自分の存在を証明するためだけに権威を振りかざしているため、その人の「おもしろくない」という感情に寄り添って感謝の気持ちを述べ、承認欲求を満たすようにしよう。そうすることで、戦う必要がなくなる。
上司の自尊心を傷つけることのないよう十分に配慮しつつ、自分の意見をはっきり述べることを心がけ、謙虚に仕事に取り組んでいこうとするリーダーに上司からの信頼は集まる。基本的には上司の「意の中にある」状態をキープしつつも、移譲された権限を手放さないことが社内政治でとても重要な戦略になる。
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