かのイチロー選手でさえ、天才的な能力ではなく、努力によってアメリカ・メジャーリーグでも一目置かれる野球選手となった。彼が小学生の頃に書いた作文からは、プロ野球選手になるという夢を幼少期から掲げていたことがうかがえる。遊びたいという誘惑を振り払って厳しい練習をいとわずコツコツ続けていたからこそ、今の彼があるのだ。
松下幸之助は、松下電器の創業間もないころ、250年後の夢を社員に語った。「生産した電気製品を通じて日本をすばらしい国にしたい。そのような願いの実現を我々が十世代にわたって熱心に目指していくならば、250年後には相当の成果が上がるだろう」と。この夢と目標を、松下はその後も毎日のように社員に語りかけたという。
会社で働く期間は、せいぜい40年か50年だ。トップが壮大な夢を折に触れて部下に伝えることで、部下は「自分が働いている間には夢は実現できないかもしれないが、次の世代につなげられるような環境をつくっておこう」と努力するようになる。それは組織が長く続くための秘訣といえよう。
高みを目指すのにも様々なやり方があるだろう。しかし「勝てば官軍、負ければ倒産」という経営理論は、長い目で見れば世間の信用を失い、会社の衰退へとつながってしまう。
1985年に、日本の旅客機が御巣鷹山に墜落した。このとき、ある企画会社が事故発生後すぐに社員を墜落現場に送り込み、御巣鷹山の土を集めてそれを化粧箱に入れ、遺族に1個5万円で売り込んだ。遺族の感情を逆撫でするその心ない商売に、マスコミは一斉にこれを叩き、結局その会社はあっという間に倒産に追い込まれた。これこそ、手段を選ばず利益を上げることだけを考えた結果であろう。
当然のことながら、利益は追求すべきものである。しかし我々が考えなければならないのは「勝ち方」だ。利益を生む企画があっても、それが経営理念に反するならば、続けたとしても様々な問題や不祥事を起こす原因となってしまうことを頭に入れておく必要がある。
あるとき、アメリカの学者ハーマン・カーンが松下に会いに来ることになった。松下は著者に彼を知っているかと尋ねた。すぐさま「21世紀は日本の世紀だと言っているアメリカのハドソン研究所の所長で、未来学者」だと答えた。翌日、松下はまた著者に、カーン氏が何をする人かと聞いた。
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