上司力20

部下に信頼される20の法則
未読
上司力20
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部下に信頼される20の法則
未読
上司力20
出版社
東洋経済新報社
出版日
2015年12月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

著者は、実に23年という長きにわたり、松下幸之助の近くに仕えてきた人物である。本書にある「部下に信頼される20の法則」とはまさに松下の経営哲学そのものであり、まるで松下の伝記を読んでいるかのようだ。しかし、やれ「ブラック企業」やら「パワハラ」と騒がしい今の世の中、組織内コミュニケーション力を高めるために、本書でじっくりその哲学を学ぶことで貴重な示唆が得られるだろう。

その法則は実にシンプルだ。「大きな夢を掲げ、誇りを持たせよ」「うわべでなく心でほめよ」「信頼して仕事を任せよ」など、誰にでも簡単にできそうに思える。「上司として当然ではないか」とお思いの方も多いだろう。しかし、それが現実にできていない上司のなんと多いことか。著者はまえがきで、とある政党の党首だった人物を挙げ、「政治家としての能力は高かったが、人間としての徳がなかった。その証拠に、党では争いが絶えなかった。茶坊主ばかりを集めるな、いろいろな意見に耳を傾けよ、と諫言したが聞き入れられず、結果その党は幻と消えた」と語っている。その人物は金銭問題によって政治の表舞台から姿を消したのだが、優れた部下がいいて彼を支えていれば危機を乗り切ることができたかもしれないし、そもそも問題が生じることはなかったかもしれない。

「上司力」の不足は、優秀な部下が離れてしまうばかりか、自分の評価を下げてしまうことにつながると著者は説く。優れた上司になっていくために気をつけるべきこととは何か、ぜひとも本書で学んでいただきたい。

ライター画像
下良果林

著者

江口 克彦(えぐち・かつひこ)
1940(昭和15)年2月1日、名古屋市生まれ。PHP総合研究所元社長。松下電器産業(株)元理事。慶應義塾大学法学部政治学科卒、愛知県立瑞陵高等学校卒。23年間、松下幸之助の下で過ごす。松下哲学、松下経営の伝承者と言われ、著書・講演多数。「地域主権型道州制」を提唱、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長等を歴任。平成22年参議院議員選挙に当選。

本書の要点

  • 要点
    1
    利益を上げさえすれば手段を選ばない、という方針は会社を倒産にまで追い込みかねない。「勝てば官軍」ではなく、勝ち方の美しさを説くのが上司の役割だ。
  • 要点
    2
    部下の熱意を引き出し、やりたいと願うことをやらせることも上司の務めである。そのような考え方は、ゆくゆくは、多様化する市場に会社が柔軟に対応できるかどうかにもつながっていくだろう。
  • 要点
    3
    優れた経営者、優れた上司というのは、優れた人材を良く用いるという「将にとっての将」を指す。成功を収めたとしても、自分ひとりの力によるものではないと自覚し、部下への感謝を忘れてはならない。

要約

「上司の役目」とは何か

持つべき夢を語れ
shutter_m/iStock/Thinkstock

かのイチロー選手でさえ、天才的な能力ではなく、努力によってアメリカ・メジャーリーグでも一目置かれる野球選手となった。彼が小学生の頃に書いた作文からは、プロ野球選手になるという夢を幼少期から掲げていたことがうかがえる。遊びたいという誘惑を振り払って厳しい練習をいとわずコツコツ続けていたからこそ、今の彼があるのだ。

松下幸之助は、松下電器の創業間もないころ、250年後の夢を社員に語った。「生産した電気製品を通じて日本をすばらしい国にしたい。そのような願いの実現を我々が十世代にわたって熱心に目指していくならば、250年後には相当の成果が上がるだろう」と。この夢と目標を、松下はその後も毎日のように社員に語りかけたという。

会社で働く期間は、せいぜい40年か50年だ。トップが壮大な夢を折に触れて部下に伝えることで、部下は「自分が働いている間には夢は実現できないかもしれないが、次の世代につなげられるような環境をつくっておこう」と努力するようになる。それは組織が長く続くための秘訣といえよう。

「勝ち方」を示す

高みを目指すのにも様々なやり方があるだろう。しかし「勝てば官軍、負ければ倒産」という経営理論は、長い目で見れば世間の信用を失い、会社の衰退へとつながってしまう。

1985年に、日本の旅客機が御巣鷹山に墜落した。このとき、ある企画会社が事故発生後すぐに社員を墜落現場に送り込み、御巣鷹山の土を集めてそれを化粧箱に入れ、遺族に1個5万円で売り込んだ。遺族の感情を逆撫でするその心ない商売に、マスコミは一斉にこれを叩き、結局その会社はあっという間に倒産に追い込まれた。これこそ、手段を選ばず利益を上げることだけを考えた結果であろう。

当然のことながら、利益は追求すべきものである。しかし我々が考えなければならないのは「勝ち方」だ。利益を生む企画があっても、それが経営理念に反するならば、続けたとしても様々な問題や不祥事を起こす原因となってしまうことを頭に入れておく必要がある。

【必読ポイント!】 部下に信頼される「上司の力」

熱意を引き出す
Miyuki Satake/iStock/Thinkstock

あるとき、アメリカの学者ハーマン・カーンが松下に会いに来ることになった。松下は著者に彼を知っているかと尋ねた。すぐさま「21世紀は日本の世紀だと言っているアメリカのハドソン研究所の所長で、未来学者」だと答えた。翌日、松下はまた著者に、カーン氏が何をする人かと聞いた。

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要約公開日 2016.04.08
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