著者がなにげなくためていた新聞記事に、こんな話があった。ある警察官が渋滞中、たまたま目をやった別の車の運転手が、タバコの灰を車の中に落としていた。それを見て、警察官は「自分の車を灰で汚すはずがない。あれは盗難車だ」と気が付いたのだという。そもそも盗難車を追っていたわけでもないのに、閃きを得て盗難の犯人を見つけたこの力こそ、「見えない問題を見抜く力」である。
「見えない問題を見抜く力」は、物事の本質(問題)を見抜く力、つまり洞察力であるといえる。
著者によると、個人、組織において生産性などのパフォーマンスを向上させようと思ったら、「目に見えるミス」を減らし、「見えない問題を見抜く力」を増強させるという2つの方向の努力が両方とも必要になる。著者は、長年意思決定学者たちが取り組んできた、ミスを減らす方法でなく、見えない問題を見抜く洞察力を高める方法とは何かに興味を抱き、力を注ぐことになった。
著者は「現場主義的意思決定(NDM理論)」を提唱してきた研究者である。よって、実験室での実験結果でなく、実際の現場での結果を重視する。そのため、洞察力が発揮された事例を調査し、「洞察力は何によって触発されるのか」「なぜ洞察力の発揮が妨げられるのか」「洞察力を発揮するための方法とは何か」を探ることにした。
20世紀初頭のウォーラスという研究者の学説によると、洞察力が発揮されるまでのメカニズムは、「準備、発案、閃き、確証」という4段階を経るという。
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