これからの日本では、身分や権力による「階級社会」ではなく、「本を読む習慣のある人」と「そうでない人」に二分される「階層社会」が訪れると著者は予測している。文化庁の「読書」に関する調査結果によると、1カ月に1冊も本を読まないという人が47.5%に達している。著者は、パチンコやケータイゲームにはまらず読書をするだけで「8人に1人、つまり上位10%の希少な人材」になれると述べている。
読書によって身につく大事な力は「集中力」と「バランス感覚」である。
成功者はもれなく高い集中力を誇っている。集中力を鍛えるには、時が経つのを忘れ、人の話が耳に入らないほど、本の世界に入りこむ経験が非常に有効である。
また「バランス感覚」とは、自分と地球、自分と他者など、世の中と自分との適切な距離感を保つ能力を指す。周囲の物事との関係性がつかめないと、対人関係にも負の影響を及ぼしかねない。少し仲良くなるとベタベタした関係に陥る一方で、何か問題が起こると絶縁状態になるなど、極端に白黒をつける関係しかつくれなくなるのだ。バランス感覚は、子どもの頃は体を使った遊びの中で身につけられる。一方、大人になってからは読書によって獲得するのが近道だ。他人の体験や知識を取り込んで、自身の内なる世界観を広げることを著者は提唱する。
20世紀の日本では、パズルのようにピースの置き場所が決まっており、唯一の正解を早く正確に導き出す「ジグソーパズル型思考」が求められていた。これにより日本は大きく経済成長を遂げることができた。しかし、ジグソーパズル型の人には、最初に設定された「正解」の画面しかつくれず、途中で柔軟に変更することができないという問題点がある。
今後の成熟社会では、つくり手の想像力次第で、組み上げ方を無限に広げ、自らビジョンを打ち出し、納得する解をつくり出せるレゴブロック型の人材が必要となる。この「レゴ型思考」を身につけるには、読書を通じて、様々な著者の「脳のかけら(アプリのようなもの)」を自分の脳につなげていかなければならない。一人の人生で経験できることには限りがある。無数のフックをつくっておくことで、多種多様な脳のかけらを引っかけることができる。このフックのことを生物学の言葉で「受容体」と呼ぶ。
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