本を読むとどのようないいことがあるのか。本を読めば読むほど、人は高いところから世界を見ることができる。読むジャンルが多ければ多いほど、足場が安定して世界をより広く自由に動き回って見ることができる。したがって、本を読むことは、自分とは違った人間の考え方や人生を追体験して「自分の経験を増やす」ことでもある。読書によって、自分の感情を動かし、体験し、自分以外の誰かの気持ちを獲得する。このようにして内部に蓄えられた知識は、自分の過去と未来の経験と結びついて「発酵」していき、「知性・見識」として定着する。
一冊の本を完成させるために、書き手は人生の経験を総動員し、編集者や校閲者は入念にチェックを行う。本ほど何人もの知恵が凝縮され、練り上げられた文章はない。一方、その場での思いつきを書くケースが多い、インターネット上の文章やSNSでの文章のみに接するだけだと、「言葉の筋力」が落ちてしまう。
とくに「古典」は、文章表現の中でも最高峰に難しく読みづらいが、古典にふれることで、言葉の精度を高め、自分が感じていることをより正確に把握したり伝えたりすることができるようになる。練り上げられ、鍛え上げられた文章の中には、自分が知らない感情や経験を教えてくれる言葉がたくさんある。本を読み、さまざまな表現を知ることは、自己表現の上達や、人間の心理に対する深い洞察にもつながるだろう。
うれしいことがあると人が学習するのは、基本的に「中毒(依存症)」と同じしくみである。達成感や喜びを感じると、脳の中に「ドーパミン」が放出され、その喜びにつながった行動を取る回路が強化される。
本をほとんど読んだことのない人なら、一冊読み切るということに挑戦して、最後まで読むことをおすすめする。読み切れないと思っていた本を最後まで読めると、たくさんのドーパミンが放出され、読書が好きになる。
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