「折れない心」をつくりあげるために必要なことを考える前に、何をもって折れない心とするか、まず明確に定義することが大切だ。「何をもって成功とみなすか」というゴールがないミッションは、どんな努力を積んでも達成することはできない。
ペンタゴンというと、タフで命知らずのミッションを遂行するマッチョな集団を連想する人が多い。もちろん、ペンタゴンのスタッフには想像を絶するミッションを与えられることが多く、タフな精神は必要不可欠だ。しかし、「折れない心」というのは、何があっても痛みを感じない、鋼鉄のような強靭な心を指しているわけではない。むしろ、ペンタゴンで求められているものは、どのような状況下でも柔軟に対応し、何があっても常に自分自身に戻ることができるという態度である。
意外に思われるかもしれないが、一見屈強なペンタゴンの兵士であっても、ときに涙し、ときにボーっとしながら心をひたすら休める時間を大切にしている。心身を意図的に休ませ、自分の弱さを受け入れる、というプロセスを積極的に取り入れているのだ。
自らの弱さを直視し、受け入れることができない人間に、それを克服することはできない。ペンタゴンの定義する「折れない心」とは、自分の弱点を直視し受容できる素直さ、どのような変化にも対応できる柔軟性、そしていかなる困難や失敗からもしなやかに回復できるタフさのことなのである。
心が折れそうなとき、多くの人はそれがどこからやってくるのかという「原因」ではなく、目の前にある「状況」にフォーカスしてしまい、冷静さを失ってパニックを起こしてしまう。しかし、状況に振り回されてそれだけを解決しようとしたところで、肝心の原因が放置されるのでは、根本的な解決にならない。いったん冷静になって状況を俯瞰するためには、それがなぜ起こったのかという原因に目を向けることが必要だ。
悩み、苦しみ、心が乱れる原因となる引き金のことをストレストリガーという。例えば、職場で度重なる遅刻やケアレスミスによって自信喪失しそうな人に、「早く起きられるように努力しろ」「仕事量を減らすように上司に相談しろ」とすぐにできそうなアドバイスを投げかけても、ストレストリガーが家族の問題や金銭トラブルなど、職場以外のところにあるのであれば、それは根本的な解決にはならないのである。
呼吸――それはあまりに自然な生理的機能であるため、人がその重要性を日常の中で意識することはほぼ無い。しかしペンタゴンには、「呼吸を制するものは、人生を制す」という格言がある。
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