逃げる自由

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出版社
プレジデント社

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出版日
2016年06月01日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「こうあるべき」「こうせねばならない」。私たちは日頃、周囲の期待を自分の心の声と同一視するあまり、独り歩きする理想や目標、基準に縛られてしまうことが多い。こうした呪縛から解放されるにはどうすればいいのか。

著者の為末氏は、問題に出くわしたとき、そこからいったん距離を置き、冷静に眺めることが必要だと語る。本当に解決すべき問題なのか、と立ち止まってみると、自分の本心を見つめ直せるようになる。

その深い思索から「走る哲学者」とも呼ばれてきた為末氏。前作『諦める力』では、最終的に勝負で勝つために努力の方向性を変えよう、というメッセージを投げかけていた。そして、その続編ともいえる本書『逃げる自由』では、ネット上の「相談室」に寄せられた25の悩みに対する、為末氏のアドバイスとコラムが展開されている。悩みの内容は、自分との付き合い方から、人間関係、キャリアの問題まで実に幅広く、読み進めるうちに我が事のように感情移入してしまうものばかりだ。

「逃げるという選択肢があると気づくだけでも、心に余裕ができる」。「状況は変えられなくても、解釈は変えられる」。プロ陸上選手として熾烈な競争に身を置き、喝采を浴び、ときに苦杯をなめ、周囲の期待に誰よりも深く向き合ってきた為末氏の言葉だからこそ、読む者の胸を打つのだろう。「逃げる」ことの前向きな意味を見出す契機を与えてくれる本書は、現時点での彼の思索の集大成だといえよう。悩みや不安が押し寄せてくるときに何度も読み返したい、心のサプリとなってくれる一冊だ。

ライター画像
松尾美里

著者

為末 大(ためすえ だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年4月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、自身が経営する株式会社侍のほか、一般社団法人アスリートソサエティ、株式会社Xiborgなどを通じて、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。著者に『走る哲学』(扶桑社)、『走りながら考える』(ダイヤモンド社)、『諦める力』『為末大の未来対談』(ともにプレジデント社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    周囲からの期待に応えることに疲れたときは、相手の期待を「小さく裏切る」ことが大事だ。期待には、応える自由も、応えない自由もある。
  • 要点
    2
    自分と相手の「当たり前」を完全にすり合わせることは不可能だ。「コントロールできるものに意識を向ける」という考え方を取り入れることで、人はもっと生きやすくなる。
  • 要点
    3
    最初から万全な計画を立てようとするよりも、小さな実験を重ねて、軌道修正しながら物事を進めるほうが、成功率が高くなる。「ほどよい無責任さ」が物を言う。

要約

面倒くさい自分との付き合い方

仕事で「やりたいこと」がないのは、悪いこと?

四十代の会社員である相談者は、上司との面談で希望のキャリアプランを問われたものの、特に「これをやりたい!」というものがないと語る。なぜなら、彼女は親の介護を再優先すべきだと考えているからだ。そんな彼女が幸せなワークライフを送るために、どんな心構えでいればいいのか。

為末氏は、相談者が求めているベストな状態は「親の介護を続けながら安心して働き続けられる」ことだと考えている。現時点で自分が出せる価値を上司に説明することは必要だが、「これをしたい」というものを捻り出さなくても、「自分が必要とされる状況」があれば、相談者は満足できるはずだ。

世の中には「好きなことで生きていく」ための選択肢があふれている。しかし、好きなことで生きられるほどの卓越した才能を持ち、どんなに追い込まれても努力を厭わない人はごく少数である。大半の人は、好きなことよりも、「世の中に求められていること」をやる中で、思わぬブレイクスルーを経験するのではないか。

完璧なビジョンにこだわらなくてもよい

現在の日本では、本田圭佑選手やイチロー選手の子ども時代の作文を取り上げ、早期に具体的なビジョンを描いて邁進することが大事だという言説が飛び交っている。もちろん、それがプラスに働くこともあるが、具体的なビジョンが成功の必須条件だと思い込むと、ビジョン探しや計画ばかりに気がとられ、行動が伴わなくなるリスクがある。つまり、運命の仕事探しに夢中な人は、「今」に目を向けていないのだ。運命の出会いは、それを受け止める準備ができているものにだけ訪れるものなのだ。

他人の期待に応えることに疲れ果てたとき
Central IT Alliance/iStock/Thinkstock

三十代の会社員である相談者は、家族や職場の人の期待に応えようとするあまり、疲れ果てているという。「自分の行動は、他人のためではなく自分で決めてやっていること」だと納得するために何が必要なのだろうか。

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要約公開日 2016.06.06
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