四十代の会社員である相談者は、上司との面談で希望のキャリアプランを問われたものの、特に「これをやりたい!」というものがないと語る。なぜなら、彼女は親の介護を再優先すべきだと考えているからだ。そんな彼女が幸せなワークライフを送るために、どんな心構えでいればいいのか。
為末氏は、相談者が求めているベストな状態は「親の介護を続けながら安心して働き続けられる」ことだと考えている。現時点で自分が出せる価値を上司に説明することは必要だが、「これをしたい」というものを捻り出さなくても、「自分が必要とされる状況」があれば、相談者は満足できるはずだ。
世の中には「好きなことで生きていく」ための選択肢があふれている。しかし、好きなことで生きられるほどの卓越した才能を持ち、どんなに追い込まれても努力を厭わない人はごく少数である。大半の人は、好きなことよりも、「世の中に求められていること」をやる中で、思わぬブレイクスルーを経験するのではないか。
現在の日本では、本田圭佑選手やイチロー選手の子ども時代の作文を取り上げ、早期に具体的なビジョンを描いて邁進することが大事だという言説が飛び交っている。もちろん、それがプラスに働くこともあるが、具体的なビジョンが成功の必須条件だと思い込むと、ビジョン探しや計画ばかりに気がとられ、行動が伴わなくなるリスクがある。つまり、運命の仕事探しに夢中な人は、「今」に目を向けていないのだ。運命の出会いは、それを受け止める準備ができているものにだけ訪れるものなのだ。
三十代の会社員である相談者は、家族や職場の人の期待に応えようとするあまり、疲れ果てているという。「自分の行動は、他人のためではなく自分で決めてやっていること」だと納得するために何が必要なのだろうか。
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