慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターの新井 康通氏は、日本ですでに6万人を超える「百寿者」と呼ばれる100歳以上の人たちの研究を行っている。新井氏によれば、百寿者には「これだけが要因だ」と言えるものはないという。
百寿者になりやすい要因としてまっさきに考えられるのは「遺伝」だが、百寿者の中には、一家揃って長寿の家系に生まれる者もいれば、1人だけ100歳まで生きのびる者もいる。そのため、遺伝という要因だけで寿命が決定するとはいえない。
別の角度から要因を探ってみると、百寿者は糖尿病や動脈硬化になる割合が少ないといえる。加えて、性格的な要因も関係するようだ。百寿者は、決めたことをしっかりと守り、新しいことを好み、チャレンジ精神豊富な傾向が強いということも、調査から明らかになった。
歳を重ねていくと、あらゆることが不自由になっていくものだが、それでも百寿者たちには幸せを感じている人が多い。新井氏はその理由として、「老年的超越」の境地に達している人が、百寿者には多いからだと考えている。現実的にできないことが増えていったり、親しい人や家族が他界していったりするなかでも、昔の幸せだった頃を思い出し、折り合いをつけながら現実を受容していく。だからこそ、百寿者は長生きできているのかもしれない。
医療の発展により、平均寿命はここ150年ほど、一直線に伸び続けている。このままいけば、今後も順調に平均寿命は伸び続け、日本は超高齢化社会へと突入していくだろう。
超高齢化社会においては、高齢者だけではなく、あらゆる年代の人が意識を変える必要があるというのが新井氏の主張だ。
たしかに高齢者には、横断歩道を早く渡れないなど、できないことが多く存在している。しかし、それらの「できないこと」を社会全体が受け入れなければ、これからの超高齢化社会にうまく対応することは難しい。「年齢を重ねること」の意味を、私たちはもっと考える必要があるのだ。
ソフトバンクグループが2014年6月に発表した、感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」は、店舗で見かけるだけでなく、今や家庭で使用されているまでになった。人型ロボットと人間が共存する社会で、それぞれが求められる役割は何なのか、元ソフトバンク ロボティクスのペッパー開発リーダーの林 要氏が、その想いを語った。
ペッパーは、ソフトバンクグループ代表の孫 正義氏の掲げる「ITで人を幸せにしたい」という願いのもと、人との関係性を重視し、家庭を明るくすることを目指して開発されたロボットだ。
ペッパーの特徴は、「人型」であることにある。ペッパーが人型だからこそ、人はペッパーの行動に意味づけを行いたくなる。そして、ペッパーに感情移入しながら接するようになる。その結果、より自然なやりとりが実現され、そのやりとりが貴重なデータとして蓄積されていくのである。
ペッパーを「人間らしい」と思ってもらうためには、ペッパーに「心」があることを感じてもらえるような表現が必要となる。たとえば、「ペッパーは寂しいからこうしている」と、人が認識できるようにしなければならない。
また、ロボットの開発で「人から納得感を得る」ためには、結局のところ、信頼感を得ることが肝要となる。技術的には、ペッパーは接する人の個人情報をくまなく集めることが可能だ。しかし、ペッパーは、あえて匿名情報だけを扱うようにしている。そうすることが、ユーザーからの信頼を得ることにつながるという考えが林氏にはある。
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