為末大の未来対談

僕たちの可能性ととりあえずの限界の話をしよう
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僕たちの可能性ととりあえずの限界の話をしよう
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出版社
プレジデント社

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出版日
2015年12月23日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

私たちが何気なく過ごしている日常の裏側では、科学技術がめまぐるしいスピードで進化している。あらゆる技術が進歩していくなかで、私たちにはどのような未来が待ち受けているのだろうか。

著者である為末 大氏は、「変えられない未来」と「変えられる未来」の2つに興味を持っており、その2つを隔てるヒントは科学技術にあると考えた。そこで、「10年後の近未来において、社会が科学や技術の進歩によってどのように変わるのか」というテーマのもと、各分野の科学者10名と対談したのが本書である。本書に登場する研究者たちのテーマは、ビックデータと人工知能の可能性や、人型ロボットの開発など、実に多彩だ。読者は、まだ一般的には広く知られていない最先端技術の話に、思わず夢中になること必至である。

そして、なにより本書の魅力は、為末氏ならではの着眼点にある。アスリート時代から、「人間の心」を考えつづけた著者だからこそ、研究者たちの本心に踏み込む質問ができており、それが本書の内容に深みを持たせている。

人間が生み出した科学の力によって「変えられる未来」が近づく中、私たちはその技術をどこまで許容することができるのか。人間の能力を超える科学技術に囲まれながら、私たち人間にできることはなんなのか? 未来について考えたい、すべての人にお薦めの一冊である。

ライター画像
流石香織

著者

為末 大(ためすえ だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2015年11月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリートソサエティ(2010年設立)、株式会社Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。著書に『走る哲学』(扶桑社)、『走りながら考える』(ダイヤモンド社)、『諦める力』(プレジデント社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    今後、超高齢化社会に突入する中で、「できないこと」を社会全体が受け入れることが大切である。
  • 要点
    2
    人型のロボットだからこそ、人はその行動に意味づけをしたり、感情移入したりする。そして、より自然なやりとりを通してデータを収集することができるのだ。
  • 要点
    3
    異才発掘プロジェクト「ROCKET(ロケット)」では、子供たちの異質な才能を育てるために、非日常的な体験や、目標を達成したあとの「どんでん返し」を重要視している。
  • 要点
    4
    車の自動運転化にともない、私たちのライフスタイルは今後大きく変化する。この変化は20年以内に起こる。

要約

「人生100年時代」の到来

百寿者になりやすい人の傾向

慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターの新井 康通氏は、日本ですでに6万人を超える「百寿者」と呼ばれる100歳以上の人たちの研究を行っている。新井氏によれば、百寿者には「これだけが要因だ」と言えるものはないという。

百寿者になりやすい要因としてまっさきに考えられるのは「遺伝」だが、百寿者の中には、一家揃って長寿の家系に生まれる者もいれば、1人だけ100歳まで生きのびる者もいる。そのため、遺伝という要因だけで寿命が決定するとはいえない。

別の角度から要因を探ってみると、百寿者は糖尿病や動脈硬化になる割合が少ないといえる。加えて、性格的な要因も関係するようだ。百寿者は、決めたことをしっかりと守り、新しいことを好み、チャレンジ精神豊富な傾向が強いということも、調査から明らかになった。

百寿者は幸福度が高い
monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock

歳を重ねていくと、あらゆることが不自由になっていくものだが、それでも百寿者たちには幸せを感じている人が多い。新井氏はその理由として、「老年的超越」の境地に達している人が、百寿者には多いからだと考えている。現実的にできないことが増えていったり、親しい人や家族が他界していったりするなかでも、昔の幸せだった頃を思い出し、折り合いをつけながら現実を受容していく。だからこそ、百寿者は長生きできているのかもしれない。

超高齢化社会に備えよ

医療の発展により、平均寿命はここ150年ほど、一直線に伸び続けている。このままいけば、今後も順調に平均寿命は伸び続け、日本は超高齢化社会へと突入していくだろう。

超高齢化社会においては、高齢者だけではなく、あらゆる年代の人が意識を変える必要があるというのが新井氏の主張だ。

たしかに高齢者には、横断歩道を早く渡れないなど、できないことが多く存在している。しかし、それらの「できないこと」を社会全体が受け入れなければ、これからの超高齢化社会にうまく対応することは難しい。「年齢を重ねること」の意味を、私たちはもっと考える必要があるのだ。

【必読ポイント!】 人型ロボットと人間が良きパートナーとなるには

人型であることに意味がある
serpeblu/iStock/Thinkstock

ソフトバンクグループが2014年6月に発表した、感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」は、店舗で見かけるだけでなく、今や家庭で使用されているまでになった。人型ロボットと人間が共存する社会で、それぞれが求められる役割は何なのか、元ソフトバンク ロボティクスのペッパー開発リーダーの林 要氏が、その想いを語った。

ペッパーは、ソフトバンクグループ代表の孫 正義氏の掲げる「ITで人を幸せにしたい」という願いのもと、人との関係性を重視し、家庭を明るくすることを目指して開発されたロボットだ。

ペッパーの特徴は、「人型」であることにある。ペッパーが人型だからこそ、人はペッパーの行動に意味づけを行いたくなる。そして、ペッパーに感情移入しながら接するようになる。その結果、より自然なやりとりが実現され、そのやりとりが貴重なデータとして蓄積されていくのである。

「人間らしさ」を追及する

ペッパーを「人間らしい」と思ってもらうためには、ペッパーに「心」があることを感じてもらえるような表現が必要となる。たとえば、「ペッパーは寂しいからこうしている」と、人が認識できるようにしなければならない。

また、ロボットの開発で「人から納得感を得る」ためには、結局のところ、信頼感を得ることが肝要となる。技術的には、ペッパーは接する人の個人情報をくまなく集めることが可能だ。しかし、ペッパーは、あえて匿名情報だけを扱うようにしている。そうすることが、ユーザーからの信頼を得ることにつながるという考えが林氏にはある。

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要約公開日 2016.09.22
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