【必読ポイント!】「ものづくり」から「ことづくり」へ
「ものづくり」ベースの日本経済の限界
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日本は「ものづくり」の分野で発展を遂げ、多くの製品を生産・輸出してきた。「ものづくり」を職人的にせず、生産性を上げるための仕組みづくりを行い、高品質なものを適正価格で提供することで世界市場を勝ち抜いてきた。最近でこそ若干翳りが見え始めたものの、その力は今なお健在である。しかし、現在の日本は少子高齢化が進行している。生産者・消費者共に減少すると、労働生産性が現状維持だとしたらGDPは確実に下がる。もはや「ものづくり」頼みでは、日本の経済力は衰退する可能性が高い、というのが著者の見解である。
「おもてなし」を工業化する
これまで日本は「ものづくり」分野では世界のトップを走ってきたが、「ことづくり」つまり、サービス業でも「ものづくり」と同じように世界に通用するのだろうか。現状では、日本のサービス業は属人的な側面が強いと著者は感じている。「おもてなし」と呼ばれる一連の接客サービスが、どんなに素晴らしいものであっても、誰かの経験則や才能、一所懸命さ等で担保されているケースがよくみられる。「才能や経験があるからできる」では、具体的なサービスの内容を可視化できないため、再現性が低くなる。特に海外での展開は、日本のサービス業の良い部分は文化や価値観の違いから再現性が低くなる傾向が強い。日本のサービス業は属人的であると同時に属日本人的であることを示している。こうした壁を越えて、だれでも、どこでも高レベルのサービスを再現するためには、サービスの要素を分解して「仕組み化」する必要があると著者は考えている。たとえばある旅館では、「理想の女将」の仕草をデータ化している。畳のどのあたりに座り、どんな角度で何回、何秒お辞儀をするか、といったことスタッフ教育に活用すると、キャリアの浅い人でも、ベテラン女将のように見えてくるという。人を喜ばせて感動させるために、サービスの要素を分解することで、顧客の「感動」をテクノロジーとして捉えようとする試みである。このように抽象度の高い「ことづくり」を可視化、定量化する仕組みに変革し、「ことづくりの工業化」を図ることで、質の高いサービスの再現性を高めることが可能となる。
感動が「リピート」につながり、利益を生む
「ことづくりの工業化」の一環として、著者は自ら経営するPDP社で「感動の技術化」を追究している。PDP社は、ブライダル事業からスタートした企業である。
要約公開日 2016.07.05
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