市場においてシェア1位の「リーダー企業」では、戦略が保守的になる傾向がある。規模が大きくなるほどコストが下がる「規模の経済」は通常、リーダー企業に有利に作用するため、競争をしかける「チャレンジャー企業」はリーダー企業と同質の競争を行っても勝つことは困難である。そのためチャレンジャー企業は差別化を図り、新たな取り組みに挑戦することになる。
一方で、リーダー企業は豊富な人材や資金を持っているため、後からの巻き返しが充分に可能である。またリーダー企業にとっては、他社が行った新しい取り組みはリアルなマーケティングリサーチの材料にもなり得る。結果として、リーダー企業はセオリーとして他社のヒットしたものを追随することになる。
しかし、このセオリーに反するのが、大手コンビニチェーン「セブン-イレブン(以下、セブン)」である。たとえば、セブンでは、プライベートブランド(PB)としては異例の高価格で高品質を追及する『セブンゴールド金の食パン』が大ヒットした。セブンはリーダー企業にもかかわらず、競合他社に先駆けて新しい取り組みをはじめる背景には、セブン鈴木敏文会長(当時)の「リーダーとしての覚悟」が見えてくる。
コンビニチェーンでPBが開発された経緯は、低価格での大量販売を実現するためであった。しかし鈴木会長は、「質の追求の結果として、量がついてくるので、質を追求する」という信念のもと、メーカーに高品質のPB商品の開発を要求した。また、セブンが食品の新商品を開発するにあたって、最終的に鈴木会長の試食で決定することは有名な話だ。この理由は、自らが試食を繰り返すことで、品質の向上を目指している姿勢が従業員に伝わり、緊張感を生む効果があるからだ。このような、鈴木会長の力強いリーダーシップやマネジメント力がセブンを引っ張り、競合他社から抜きん出た結果を生み出しているのである。
日本のプレミアム・ビール市場では、長年サッポロビール『ヱビス』が定番の位置を占めてきた。しかし2005年に投入されたサントリー『ザ・プレミアム・モルツ(以下、プレモル)』が僅か3年でトップに立った。プレモルが短期間に突出した結果を出せたのは、
3,400冊以上の要約が楽しめる