複線思考とは、現実の認識に対して、「別の視点」を持ち、複数の思考を同時並行で走らせる状態である。
著者は、対話の最中に相手の質問に答えながら、次に話すべき内容をメモしながら話しているという。これは典型的な複線思考であり、「相手の話を聞く」ことと「次の質問を準備する」ことを同時に行っているのだ。
複線思考は次の5つの力から成る。1つ目は、相手の立場になる「他者視点」を持って、相手の気持ちを汲み取り、深い人間関係を築いていく力である。2つ目は、もう一人の自分が自分を客観的に見ることで、感情をコントロールし、コンディションを整える力である。3つ目は、全体を俯瞰し、「全体」と「部分」の視点を使い分けながら、状況に応じて柔軟に対処する力だ。4つ目は、直感の正しさを論理的に説明でき、瞬時に正しい判断ができる力である。そして5つ目は、思い込みにとらわれず、常識を覆す発想をする力である。
複線思考は、意識的な訓練によって、誰でも身につけていくことができる。本書では、複線思考によって仕事のスキルをアップさせる方法や、良好な人間関係を築く方法を多角的に紹介していく。
現代は、スピードが重視され、細切れの情報ばかりがメディアで発信されて、現実の認識のみに注意を向ける「単線思考」に陥りやすい時代だといえる。SNSでのコミュニケーションは、単線思考をさらに助長している。同質性の高い人と、同じレベルの会話を続けているにすぎないからだ。このままでは、自分の思考を広げてくれる深い次元のものとの接触が減って、複雑な文脈をとらえる力が衰えるだけでなく、人としての厚みがなくなってしまう。また、想定外を前提にした選択肢をとれないというのも、単線思考の弊害である。
一方、複数の視点を同時並行的に持ち、複数のモードを自在に切り替える複線思考を身につければ、仕事への集中力が高まり、生産性向上につながる。また、望む結果にたどり着くまでのルートをいくつも用意できるので、状況に合った最適なルートを見つけることができる。こうして醸し出される「余裕感」は、周囲の人に「気楽に付き合えそうだ」という印象を与え、仕事が舞い込んできやすくなるのだ。
複線思考ができる人は、自分
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