近年、日本からの輸出が伸びない。日本の貿易といえば、「加工貿易」や「貿易黒字国」といった言葉とセットで認識している人も多いと思うが、2011年以降、日本の貿易は赤字である。安倍内閣が発足した2012年、年平均為替レートは1ドル79.8円だったが、アベノミクスによる大胆な金融緩和により2014年には1ドル105.9円となり、実に30%以上為替が切り下がった。このような状況において、2012年に8013億ドルだった輸出額は、2014年には6944億ドルまで、つまり13%も減少した。それはなぜなのか。
輸出先の地域別にその内訳を見てみると、最大の貿易相手国であるアジアへの輸出が2011年から2014年にかけて18%減少し、同じ時期にヨーロッパへの輸出は28%も減った。対アジア・ヨーロッパの貿易黒字が大幅に減少した現在、日本が大幅な黒字額を出しているのは対米だけである。
その背景にあるのが、中国の輸出伸長である。2012年には輸出額でアメリカも抜き、世界第1位の輸出大国となった中国は、貿易収支でも大幅な黒字を叩き出しており、2007年から2008年にかけての黒字は3000億ドルを上回った。中国が輸出しているもののほとんどが工業製品であり、中国は「世界の工場」になったといえる。日本では、「中国の製品は安いが粗悪」といったイメージがずいぶん根深く、また、モノづくりに力を入れてきた伝統から「高くてもよい物であれば対抗できる」と考えがちである。しかし、今や中国製品の性能は日本とさほど変わらない上に、価格は安い。結果、先進国でも開発途上国でも中国製品は売れている。日本は世界のほとんどの地域において中国に競り負けている。
一方で、中国の対外直接投資額は日本の半分程度にとどまっている。だが今後、10年、20年後に中国の直接投資額が大きく増えることは間違いないだろう。中国は、昨今話題のAIIBに関する動きからしても、日本を含めたアジアに「元」で決済できる経済圏を作ろうとしていると考えられる。日本はこうした現実を冷静に見据えておく必要がある。
経済成長とエネルギーの消費量には相関性がある。2009年にアメリカを抜き、世界最大のエネルギー消費国となった中国だが、そのエネルギー源については、他の先進諸国と大きく異なる点がある。
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