中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男

雷軍伝
未読
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
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雷軍伝
未読
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
出版社
東洋経済新報社
出版日
2015年05月14日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

スマートフォン発表からわずか3年あまりで中国首位、世界シェアでもサムスン、アップルに次ぐ世界第3位のスマホメーカーへと大躍進したシャオミ。その創業者である雷軍(レイ・ジュン)の半生を描いたのが本書である。しばしばアップル創業者のスティーブ・ジョブズと比較される雷軍だが、本書を読み、雷軍が歩んできた道のりを追う限り、そこにはジョブズのような型破りな青年の姿はない。

幼い頃から勉強ができた優等生は努力の結果、プログラマーとして頭角を現し、エンジェル投資家に転身。莫大な利益を手に入れたものの、大学時代に読んだノンフィクション『パソコン革命の英雄たち』で知ったジョブズの姿を忘れられず、世界的な企業を自らの手で作りたいと、40歳でシャオミを立ち上げる。創業後の快進撃は言わずと知れたところだが、注目したいのは多くの失敗を重ねて現在に辿り着いたその道のりだ。地に足をしっかりつけながら理想を追う彼のような人物こそ、中国に求められているイノベーターなのかもしれない。

シャオミのビジネス戦略というよりは、起業家としての雷軍の半生を描いた作品である。今最も注目を集める企業を生み出した雷軍がなぜこの場所に立つことができたのか、そして中国のインターネットおよびモバイルインターネット業界の黎明期から現在までの歩みについて、知ることができるという点でも意義ある一冊だ。

著者

陳潤(チェンルン)
湖北省出身。ビジネス作家。中央人民広播電台「経済之声」特約コメンテイター。中国国内の多くの有名メディアでコラムを執筆し、特に商業史、企業史に詳しい。著書に『グローバルビジネス100年』、『生活はもっと素晴らしくできる』、『金儲けは一種の信仰である』、『理想を現実に活かす』、『大逆転』(いずれも未邦訳)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれることの多い雷軍だが、幼い頃から優等生で勤勉な彼は、ジョブズとはまた違ったカリスマ性を持っている。
  • 要点
    2
    シャオミ科技の創業者の雷軍は、プログラマーとして業界を牽引する存在になった後、エンジェル投資家として成功した経歴の持ち主である。
  • 要点
    3
    雷軍がシャオミ科技を創設したのは40歳のとき。スマートフォン市場への進出のその先に見据えている市場は、モバイルインターネット業界である。

要約

プログラマーへの道

優等生であり続けた小中高時代

1969年、湖北省仙桃市で生まれた雷軍は、幼い頃から思索好きで、母親のために持ち運びのできる電灯を作るなど、新しいものを発明することが好きだった。小学校では卒業するまでどの教科もトップクラスで、「三好学生(中国の学生報奨制度で身体、学業、思想が優秀な生徒を指す)」にも選ばれた。中学、高校時代は囲碁や古典詩を趣味としながら、学業を両立。成績は常に上位数名に入り、教師や学友からも認められる優等生であった。

初めての起業と失敗
ZarkoCvijovic/iStock/Thinkstock

1987年、雷軍は武漢大学のコンピュータ学部に入学。友人の薦めで、雷軍の運命を変えたというノンフィクション『パソコン革命の英雄たち』と出会い、スティーブ・ジョブズのように世界トップの企業を作りたいと思うようになる。

2年生になると、彼は武漢の電気街に出て、ソフトウェアをインストールしたり、故障を直したり、プログラミングしたりするのを手伝うようになった。大学で知識を身につけるだけでなく、実践で腕を磨いた彼の名前は電気街でも有名になり、街中の社長やコンピュータを学ぶ同世代の学生たちとのネットワークが構築される。

大学3年の頃、雷軍はクラスメートと共にビジネス用ソフトウェア「免疫90」を制作し、プログラマーとしての第一歩を踏み出した。そして大学4年生で、電気街で知り合った王全国、李儒雄と共に「三色」を設立。漢字入力ソフトを開発したが、販売直後にコピー商品が出回り、競争力をなくした三色は内輪もめの結果、解散することになった。雷軍は後にこの頃のことを「起業は崖から飛び降りるようなものだ。あなたに社会的なリソースも、資金もなく、ひとつの会社を経営していくのにどのようなことが必要なのかわかっていないとしたら、情熱だけで起業しても結果は悲惨なものになるだろう」と語っている。

【必読ポイント!】 青春を捧げた金山での学び

報われない努力

雷軍が22歳から38歳までの16年間を過ごした会社が、香港発祥の大手ソフトウェア企業「金山」である。入社当時、金山では事務用ソフトウェア「WPS」が爆発的に売れており、雷軍は北京金山ソフトウェア開発部の事実上の責任者となってWPSの更なる発展に力を注いだ。

その頃、世界の競合相手を一掃してソフトウェア市場を独占していたのがマイクロソフト社である。マイクロソフト社は中国市場にも勢力を伸ばし始め、金山の立場は次第に苦しいものになっていった。雷軍は自ら指揮をとり、昼夜を問わずWPSに代わるウィンドウズ用の漢字入力ソフト「盤古」の開発に励み、販売したが結果はふるわず、1996年、金山は経営危機に陥った。

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要約公開日 2016.04.01
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