ナイトクラブのプロモーター、スコット・ハリソンは、夜の世界のすさんだ生活に嫌気がさしていた。その環境から脱却したいと考えた彼は、慈善団体をいくつもリストアップし、ボランティアとして働かせてほしいとかたっぱしから当たってみた。
あらゆる団体から断られ続けたハリソンを受け入れたのは、世界の最貧困国を病院船で巡回し、無料で医療サービスを提供する非営利組織(NPO)だった。西アフリカのリベリアに赴き、フォトジャーナリストとして患者の話をまとめる仕事を任されたハリソンは、貧困国における疾患の原因は清潔な水が手に入らないことにあると知る。そして世界の8億人に清潔で安全な飲料水を届けることを目標にしたNPO「チャリティー・ウォーター」を設立したのである。現在、ハリソンはプロモーターとしての経験を活かして世界中の人々から支援を得るべく駆けずり回り、支援の輪を広げている。
ここで注目したいのは、ハリソンが最初から特定の活動を希望していたのではなく、何十ものNPOに応募した結果、唯一受け入れてくれた団体の活動をきっかけに自分の事業を立ち上げたということである。どこでもいいから、とボランティアの世界に飛び込んでみて、そこで想像を絶する光景を目の当たりにした。そして頭に浮かんださまざまな疑問への解決法を探った結果、「清潔で安全な水を届けたい」という情熱が生まれたのである。
情熱を傾けられるものを見つけようと自分の内側へ目を向ける人は多いが、情熱というものは行動して初めて生まれるものだ。まずはひとつの世界に積極的に関わり、好奇心を持ってチャンスを探っていくべきである。
未来がどのように展開していくかは、私たちの想像力次第だ。想像力が豊かであればそれだけ鮮やかなイメージを描けるが、乏しければ過去の延長線上のことしか成し遂げられない。
確固たるイメージを持つことが並外れた偉業を支える土台になることは、アマゾン創業者で最高経営責任者であるジェフ・ベゾスの例を見ればわかるだろう。ベゾスは創業当初から巨大企業を経営する姿をしっかりイメージしていた。アマゾンという社名をつけたのも、世界一の流域面積を誇るアマゾン川や、ギリシャ神話に登場する女戦士の国アマゾネスを意識してのものである。
人々の大半は、大きな目標に挑戦するのを怖がるものだ。実際、大舞台に移ることは、いつでも居心地が悪いものである。
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