読書をする際、じっくり時間をかけて隅から隅まで情報を漏らさないように読み進める人がいる。そういう人は、知識を取り込むにはある程度丁寧に読まなければ頭に残らないと考えているのだろう。
しかし、それはただの思い込みである――それが1日に2冊の本を読みながら商業レビューを書く著者の主張だ。今ではレビューを書いた本の売れ行きを伸ばすことに定評があるほど書評家として有名になった著者だが、数年前に仕事としてレビューを書き始める以前は、1ページに5分もかかってしまうほどの遅読家だったという。その時は、じっくり読んでいるのに内容は全く頭に入ってこないし、大事だと感じたことでも、後から振り返ると忘れていることの方が多かったそうだ。
だが、いざレビューを書き始めてみると、締め切りに間に合わせるために、否が応でもある程度以上のスピードでページをめくらざるを得なくなった。そうした中、気づいたのが「いくら熟読しても、実際には忘れていることの方が多い」という現実だった。ゆっくり読んだからといって、内容がより頭に入るわけではなかったのだ。
「すべてを頭に叩き込むこと」を前提にじっくり読んだとしても、現実的にそれは難しい。「とても感動した!」と思う本に巡り合えても、覚えているのはせいぜいその一部だけが現実である。後から振り返ってみると、「内容はよく覚えてないけど良い本だった」という感想しか出てこないという経験は、誰しもが持っているのではないだろうか。
つまるところ、人間の脳ではどんなにじっくり読んでも本の内容を100%写し取ることはできないし、さらにいえばそうする必要もないのである。読書の価値は、その本の中で重要な1%に巡りあうことにある。たくさんの本を読み、それぞれの中から重要な1%を集めていくほうが、かえって自分の中に確固たる知識として定着するのだ。
自分が遅読家だと思っている人はまず、このように読書に対する考え方を変えるところから始めてほしい。「熟読の呪縛」から解き放たれれば、1週間に1冊しか読めなかった人が同じ期間に10冊読めるようになることも決して夢ではなくなるだろう。
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