本書では冒頭、ロシアの軍事に関する基礎的事項がまとめられている。本書の主役であるロシア軍(正式名称ロシア連邦軍)の兵力は2021年現在、定数101万3628人、実勢90万人程度とされる。うち、18~27歳の男子国民の義務で勤務期間12カ月の徴兵は25万人程度、残りは職業軍人として定年まで勤務する将校約21万人、期間勤務する契約軍人約40万人、各種学校生徒などだ。
ロシア軍の組織は、陸軍(SV)・海軍(VMF)・航空宇宙軍(VKS)の三軍種に加えて、独立兵科の空挺部隊(VDV)、戦略ロケット部隊(RVSN)などから成る。
また、本書に多く登場するロシア軍の「演習」は、軍事用語辞書『用語法及び定義における戦争と平和』によると、「総合的準備」の一環として位置付けられる。
総合的準備は、要員教育と部隊錬成の体系であり、『ロシア連邦軍事ドクトリン』に定められた国防上の目的にロシア軍を適合させるための作戦準備、戦闘準備、心理的準備、動員準備の4つの要素で構成される。演習の位置付けを理解するには作戦準備、戦闘準備が特に重要だ。作戦準備は、一つの戦争を指揮・運営する能力の獲得及び向上を目指す。
ソ連の崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)の拡大が続いている。チェコ、ハンガリー、ポーランドがNATOに加わった1999年以降順次加盟国が増え、最近では2017年にモンテネグロが加盟した。
ロシアは安全保障政策を包括する政策文書『ロシア連邦国家安全保障戦略』(2015年公表)でNATO拡大を「国家安全保障上の脅威」と位置付けるなど、不快感を露わにしている。
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