30代、40代で会社の外部に飛び出して活躍したいと考える人材が増えている。関連会社で経営手腕を磨き、プロ経営者としてスカウトされるのを待つケースもあれば、外資系企業へ転職してチャンスを狙うケースもある。
一方、サントリーや資生堂などの歴史ある大企業が経営トップに外部の人材を据える現状は、大企業が社内でプロ経営者の候補となるリーダーを育てる能力を失いつつあることを意味している。日本全体で、ビジネスリーダーが圧倒的に不足しているのだ。
経営幹部となるエグゼクティブ層のスカウトを行ってきた著者によると、プロ経営者の候補は「上位5%のビジネスパーソン」である。彼らは確固とした仕事哲学や職業観、豊かな人間性、ビジネスの知識と技術を持っている。そして、ピラミッドの頂点に立って人を動かすのではなく、「傍を楽にする」という信念を持って、自分が働くことで残りの95%を幸せにするリーダーにこそ、プロ経営者をめざす資格があるといえる。
日本企業で経営者に値する人材を育てられなくなった主な理由は、タフなビジネスリーダーを育てる「辺境」と呼ぶべき部門や子会社、支社が日本企業からなくなったからである。見どころのあるビジネスリーダーの多くは、「いつ潰されるかわからない」という危機感のもと、厳しい仕事を任される非エリートコースを歩んできた人物である。激戦を切り抜けるうちに鍛え上げられ、エリートコースまっしぐらのリーダーを凌ぐ「不死身の男」になるのだ。
今後ビジネスリーダーを育成するには、リーダー候補をASEANやインド、中国を含めたアジアに派遣することを著者はすすめている。中でもASEAN市場ではグローバル企業に勤める一流のビジネスパーソンがしのぎを削っているため、彼らと競い合うことは良き刺激となる。また、ASEANの支店では、かなり大規模なビジネスを自己裁量で進められるチャンスが多い。
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