なぜ今、シュンペーターなのか

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なぜ今、シュンペーターなのか
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年10月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

シュンペーターといえば、「創造的破壊」や「技術革新」といった言葉とともに想起される、経済学の大家として記憶されている人も多いと思う。19世紀末に生まれ、半世紀以上も前に没したシュンペーターだが、著者は21世紀の今こそ、われわれは彼に学ぶべきだと論じている。

『自分はウィーン一番のドン・ファン(プレイボーイ)、ヨーロッパ一番の馬乗り、そして世界で一番の経済学者になる』との野心を燃やしていたというシュンペーターだが、資本主義の本質や原理、命運を純粋に追い求めた彼の理論は万人に受け入れられるものではなく、むしろ1930年代・40年代の不況や戦後経済の立て直しなど、実体経済に即した理論を一早く提唱したケインズに当時は軍配が上がった。

しかし、世界がますます狭くなりつつある今日において、彼の提唱する創造的破壊はグローバル・ビジネスを動かす原動力にほかならず、その理論はピーター・ドラッカーへと継承され、スティーブ・ジョブズなどの企業家が具現化する形で現在に息づいている。

本書では、このようなシュンペーター、ドラッカーの人生や理論がわかりやすく俯瞰されていると同時に、ジョブズの人生を追うことで企業家として必要な要素が分析されている。そして、これまで数々の企業経営に携わり、自ら経営塾も開いている著者自身の経験をもとに、一部の天才企業家に社会の発展を委ねるのではなく、個人一人ひとりが企業家マインドを持ち行動するための方法についても述べられているので、ぜひ一読されたい。

ライター画像
和田有紀子

著者

秋元 征紘
ワイ・エイ・パートナーズ代表取締役。ジャイロ経営塾代表。
上智大学経済学部卒業、シドニー大学経済学部修士課程。1970年日本精工に入社、ニューヨーク、トロント駐在等を経て、日本ケンタッキーフライドチキン(日本KFC)へ。その後、同社マーケティング本部長、日本ペプシ・コーラ副社長、日本KFC常務取締役、ナイキジャパン代表取締役社長、LVMHグループのゲラン代表取締役社長、同取締役会長、ゲランSA(パリ本社)執行役員と、欧米企業日本法人のトップマネジメントを歴任。2006年ワイ・エイ・パートナーズを創業。
2008年にはジャイロ経営塾を設立。ベンチャー企業支援、戦略経営コンサルティング、大企業向けグローバル人材研修およびマネジメント研修のプログラムデザイン・実施、数社の社外取締役・顧問等を務めるほか、執筆・講演等を精力的に展開中。著書に『金の社員・銀の社員・銅の社員』(文春新書)、『こうして私は外資4社のトップになった』(東洋経済新報社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    シュンペーターは、企業家によるイノベーションが、静態的な経済均衡を破壊し、動態的な経済発展を生むと考え、その過程を「創造的破壊」と呼んだ。
  • 要点
    2
    ドラッカーはシュンペーターの理論を深化させ、時代に適合したあらゆる分野でのイノベーションの必要性と、自由な産業社会構築のための企業家のありかたについて論じ、当時の企業組織に影響を与えた。
  • 要点
    3
    偉大な企業家スティーブ・ジョブズは、シュンペーターが定義する「企業家」の特徴にまさしく適合しており、彼が掲げた「企業家ビジョン」どおり、数々のイノベーションで世界を変えた。

要約

シュンペーターの人生

若き日の天才シュンペーター

1883年、オーストリア=ハンガリー帝国の田舎町に生を享けたシュンペーターは、その後母の再婚に伴い首都ウィーンに移り住み、10歳から通い始めた高等教育機関で優秀な成績を収める。ウィーン大学では法学・経済学を学び、20代半ばで初の経済書を発表。生来の性格から行く先々で変人扱いされるも、無事大学の教授にも就任し、のちに彼の理論の中核ともなる『経済発展の理論』も発表するなど、彼の人生においてもっとも充実した日々が続いた。

挫折続きの30代。大学教授から大蔵大臣、銀行頭取へ

第一次世界大戦後には、当時の外務大臣バウアーの勧めでオーストリアの大蔵大臣の職を拝命し、戦後処理および戦後復興に砕身した。が、経済再建の方法についてバウアーと対立し、さらには悪意に満ちた噂を流されたことで失脚することとなる。大学教授として古巣に帰ったシュンペーターはその後、「銀行家が企業家のイノベーションを評価し、投資すること」が経済を発展させるとの持論を実践すべく、ウィーンにて銀行の頭取に就任した。しかしここでも不運なことに、戦後の安定恐慌の波を受けて経営状況が悪化し、多大な負債とともに銀行を去ることとなったのである。

経済学に身を捧げた晩年
Fuse/Thinkstock

翌年、ドイツの名門ボン大学の教授に就任したシュンペーターのもとには、多くの優秀な学生が集まった。

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要約公開日 2016.02.12
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