安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスにより、日本は新しい方向に舵を切った。それ以前は、欧米各国では大幅な金融緩和を進められ、一定の景気回復に成功していたにもかかわらず、日本では苦境下でも金融引き締め政策を継続していた。そのような状態から、日銀の新総裁となった黒田東彦氏のもと、日銀は大胆な金融緩和を実行した。それは何も突飛な政策ではなく、経営学の常識を当たり前に機能させようというものだ。具体的には、金融緩和を実行し、その結果として円安やインフレになり、景気が良くなるということである。
リーマン・ショック以降、円はドルに対して最大30%値上がりした一方で、ウォンは30%値下がりしていたため、韓国に対するハンディキャップは60%にも及んでいたのだ。その結果、パナソニックやソニーといった日本を代表するメーカーが赤字に転落していった。
アベノミクスによる金融緩和は、即座に市場に活気を与えた。日銀が金融機関から国債や手形を買い取り、市場への資金供給を増やしている。高度経済成長時代の日本では、常に3~4%のインフレだった。アベノミクスでは2%のインフレ目標が設定されており、おだやかなインフレを志向している。これは「日銀は本気でデフレを退治するのだ」という決意表明を意味し、お金を使うことを渋っていた消費者や企業のマインドを変えていくことだろう。
アベノミクスに対する批判で代表的なものは、大胆な金融緩和によってハイパーインフレになってしまうというものだ。しかし、アメリカにおいて以前から金融緩和をしてきている中で、ハイパーインフレは起きていない。日本でハイパーインフレになったのは、戦争のときくらいのもので、石油危機などのインフレが発生した際も、日銀はしっかり制御することができた。
アベノミクスが始まり、実質金利が下がり、円安と株高になったことから、日本経済はいい方向に向かっているようだ。ただ、アベノミクスが成功するかどうかはまだ確信を持つところまではいっていない。特に、消費税の引き上げは注意が必要である。
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