コーオウンド・ビジネス(従業員所有事業)とは、社員が会社の大株主となり、利益極大化に向けて行動することが、会社の利益向上や社員の幸福につながるビジネスモデルである。コーオウンド会社の経営者や社員たちには共通して、「わかちあい」のエトス(気風)が満ちている。
元祖コーオウンド会社は、英国の老舗百貨店「ジョン・ルイス」だ。同社の事業目的は「成功したビジネスを通じたパートナー(従業員)たちの最大幸福追求」である。また、年度の利益に応じ、パートナーの年収に対して等率のボーナスが支払われる。会社は、社員の幸福を追求する中で、社員の家族や地域、環境に積極的に貢献するようになる。また社員は、自社で働いていることに誇りを感じ、共に協力し合い、わかち合う「オーナーシップ・カルチャー」を醸成していく。
また、「経営の専管性」が同社の憲法に規定されており、経営の意思決定はトップ経営者(会長)の手に委ねられている。一方、パートナーたちは会長の罷免権を持っている。これがコーオウンド会社に一般的に見られるスタイルだ。
架空の会社シャインズ株式会社がコーオウンド化していくプロセスを疑似体験してみよう。
ある日、オーナー社長は「この会社を社員みんなにあげる」と言い出し、自身の所有する株を社員たちに譲渡していった。オーナーとなった社員たちは、会社の経営情報をこれまでよりも熱心に学ぶようになった。また、好業績により、「パートナーズ・ボーナス」として全員に公平に利益が分配された。すると社員たちは「自分たちの成果次第で手にする配分が増える」と俄然やる気になった。
仕事のスタイルにおいても、各社員が最適解を求めて自律的に判断を下すようになってきた。「一緒に稼いで利益をシェアする」という共通認識が、残業で会社の人件費を上げたくないという考えを生み、残業時間の削減につながった。その結果、何の号令がなくとも経費節約のために社員が動き、仲間を助け合う気運が社内に満ちていった。
さらには、一生懸命、親切、笑顔、ポジティブといった空気が社内に浸透し、お客様や取引先、自分たちの家族、地域、社会への「貢献」が意識されるようになっていったのだ。
上記の物語の解説を通じて、コーオウンド・ビジネスの本質や押さえるべきポイント、組織に生まれる気運や気風を汲み取ってほしい。
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