世界一の馬をつくる

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世界一の馬をつくる
出版社
出版日
2014年12月05日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

女性や若者が楽しむようになったこともあり、昔に比べれば、競馬はずいぶんメジャーになった。とは言っても、競馬にまったく興味のない人にとって、競走馬の生産と育成をテーマにした本書は一見、「別世界の話」と思えるかもしれない。しかしながら、本書は、経営やマネジメントといったビジネス書としての要素も強く、著者が新しい事業にどのような姿勢で取り組み、どんな視点で経営を行い、どうやって人材を育てているかについて、非常に具体的に書かれている。

もともと馬の世界で素人だった著者は、オーナーブリーダーとして自分の憧れや夢を実現させたいという思いを強く持ち、失敗して試行錯誤しながらも、強い馬を育てるための牧場をつくり、実際に重賞レースで勝つような強い馬を輩出していく。

こうした結果を導いたのは、自らをゼネラリストと認める著者の、経営者としての正しい判断と実行力、そして、それぞれのプロフェッショナルにはすべてを任せるという潔さにある。さらに、文章から伝わってくるのは、著者の謙虚で誠実な人間性だ。著者は、ほかに本業を持っており、そちらもゼロからスタートさせて企業として成功させていることからもわかるように、優れた起業家であり、経営者なのである。競馬好きのみならず、新規事業に取り組もうとしている方や経営者の方にも、ぜひ手に取ってみてもらいたい一冊である。

著者

前田 幸治
1949年奈良県生まれ。「アイテック株式会社」代表取締役。34歳で馬主となり、84年に北海道新冠に「有限会社マエコウファーム」(09年より株式会社ノースヒルズ)を開設。これまでにファレノプシス(98年桜花賞など)、ノーリーズン(02皐月賞)、ヘヴンリーロマンス(05年天皇賞・秋)、トランセンド(10、11年JCダートなど)、ビートブラック(12年天皇賞・春)、キズナ(13年日本ダービー)、ワンアンドオンリー(14年日本ダービー)らの名馬を世に送り出した。現在JRA現役登録馬は160頭以上、GⅠ通算26勝という成績を収め、日本競馬屈指のオーナーブリーダーとして強い馬づくりに励む。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者は馬主になり、北海道で牧場経営を始めたが、最初はうまくいかなかった。欧米から専門のコンサルタントを招き、それぞれの分野のスペシャリストのアドバイスを受けながら改善を行うことにより、競馬で結果を出せる馬が育つようになった。
  • 要点
    2
    ゼネラリストは、細かいことをしすぎないで大きなグラウンドデザインを描き、個々の仕事は現場のスペシャリストに任せることが大切だ。
  • 要点
    3
    スタッフ全員がすべての馬に関わるようにすることで、どの馬が勝っても、スタッフ全員が喜び、感動することができる。

要約

日本で一番美しい牧場をつくる

成功した理由は「成功するまでやり続けたから」
Dovapi/iStock/Thinkstock

著者は、20代はじめの頃、従兄弟に連れられて初めて馬券を買って以来、競馬を楽しむようになった。25歳のときには会社を興している。やがて、同業の先輩で馬主をしていた人物や、彼の紹介による馬の調教師と交流するようになり、1983年、34歳のときに馬主になった。北海道の生産地を見に行き、自分でも牧場をやってみたいと思うようになっていた著者は、翌年、北海道の新冠町で牧場経営を始める。

牧場をつくるために、設計士と一緒に欧米の牧場を見て回り、著者はその広大さ、美しさに感動したという。日本で一番美しい牧場をつくろうと決心し、土地を買って原野を切り拓き、サラブレッド生産牧場であるマエコウファーム(現ノースヒルズ)をつくった。

やがて、馬主になることを誘ってくれた人物から繁殖牝馬として譲り受けた馬が、ゴールデンアワーとゴールデンゼウスという2頭のオープン馬を産んだ。ゴールデンゼウスはノースヒルズの生産馬として、初めてダービーに出走した。21年後、生産馬として延べ12頭目の出走となったキズナはダービー初制覇を遂げ、翌年ワンアンドオンリーが連覇を果たすことになる。

成功することができたのは、「成功するまでやり続けたから」だという。

スペシャリストにアドバイスを受ける

牧場を始めてから最初の10年は失敗の連続だった。自分でも何度もやめようと思い、周囲からは「素人に牧場経営なんてできるわけがない。どうせ5、6年で失敗するだろう」と言われたという。

欧米の馬と日本の馬の圧倒的な差に頭を抱えていた頃、欧米には飼料や馬体管理を専門とするコンサルタントがいるということを知った。そこで著者は、世界トップクラスのスペシャリスト、ドクター・スティーヴ・ジャクソンをコンサルタントとして招く契約をした。1996年以来、ノースヒルズでは飼料や栄養管理、運動とのバランスなどについて彼のアドバイスを仰いでいる。

ほかにも、アメリカから放牧地の土壌管理のコンサルタント、馬専門の歯科医、イギリスから配合(種牡馬と繁殖牝馬の組み合わせ)のコンサルタントが年1回ノースヒルズを訪れる。世界のホースビジネスを知り、それぞれの分野のスペシャリストにアドバイスを受けることで、新しい技術や情報、世界の動向を知ることができるのだ。

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要約公開日 2015.10.02
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