日本の人口減少は、地方だけで起きているように思うかもしれない。しかし東京・埼玉・千葉・神奈川の東京圏は、2015年に人口のピークに達し、2020年以降、減少していくだろうという人口推計が発表されている。
実際、首都圏近郊の市町村では、市立病院の閉鎖、大型量販店の撤退、ニュータウンの空き家増加などが現実として始まっており、人口減少のペースも地方と変わらないかそれ以上の速さで進んでいる自治体がある。このまま首都圏の人口減少・高齢化が進んでいけば、老朽化したマンションが放置される「限界マンション」の増加や、学校の統廃合、公共交通機関の路線廃止、商店の閉鎖・撤退などが進むことになる。高齢者が増えることで救急医療の受け入れもパンク状態になるだろう。
まちが弱体化すれば、人はより便利な都心へと流れ、おもに高齢者が移転せずに取り残されることになる。実際、すでに首都圏の公営住宅などにおいてこのような現象が起きており、まちが活気を失いつつあるのが現実だ。
人口が減少していくと、ガス・水道・公共交通機関などのインフラや、商店・ガソリンスタンドなどの商業施設はどうなっていくのか。
国土交通省の発表した資料には、病院・銀行・郵便局・商業施設などが、どのくらいの人口規模の自治体に50%および80%の確率で存在するかがまとめられている。2050年には人口2千人以下の自治体、人口2千~4千の自治体が大幅に増えることになる。この規模では銀行、通所・短期入所介護事業、ショッピングセンターなどのサービス施設が不足する可能性が高い。
また、人口減少に伴い、スーパー、コンビニ、ガソリンスタンド、教育機関なども減っていく可能性がある。介護サービスの需要と供給のバランスが崩れていくことも考えられる。現在でも、公共交通機関の経営が立ち行かなくなり、自治体がコミュニティバスや乗合タクシーを独自に運営するという試みはすでに始まっている。ITを活用することで新たな生活スタイルに転換するという楽観的な見方もあるが、住民がどんどん流出するという悲観的なシナリオに備え、早急な対策を講じなければならない。
人口減少を財政面から考えてみよう。実質GDP成長率をプラスに保つには、労働力人口の減少を上回って労働生産性を上げていかなければならない。
3,400冊以上の要約が楽しめる