二〇一一年一二月七日、リブセンスは東証マザーズに上場した。恒例となっている新規上場会社による「鐘つき」のセレモニーでは、社長の村上太一がいつものニコニコ顔で力強く鐘をたたき、その様子は夜の経済ニュース番組等で放送された。
そして年が明けた二〇一二年一月五日、村上は夜9時から放送のNHKニュース番組に生出演し、新潟県津南町議にトップ当選した東京大学大学院生の桑原悠と「二五歳対談」を行ったのである。
対談でNHKの男性アナウンサーがポツリと漏らした素朴な疑問が、リブセンスという会社を象徴していた。
「これで儲かるんですか?」
村上はいつものニコニコ顔のまま「ハイ」と答えた。二〇一一年十二月期の決算では、売上高が十一億三四五〇万円、営業利益が五億一八七六万円である。利益率はなんと四割を超えている。
リブセンスが主力としているのは、アルバイト情報サイト「ジョブセンス」である。アルバイトを採用したい企業は、ジョブセンスのサイトに、「無料」で募集広告を出すことができる。その広告を見て応募してきた人を採用したときに、初めて企業はお金を払う、いわゆる「成功報酬型」である。更に、応募者は採用が決まると、リブセンスから最大2万円の「採用祝い金」がもらえるのだ。
募集広告を無料で掲載し、採用が決まった利用者には祝い金を出す。これでは男性アナウンサーが「儲かるんですか?」と思わず聞いてしまうのも無理はない。学生だった彼らが営業に行った先で、「そんなビジネスモデル、本当に成り立つの?学生が考えそうな浅はかなアイディアだよね」と言われたこともある。
では、この画期的なビジネスモデルは、どのようにして生まれたのか。村上はインタビューでこう語っている。
「とにかく、お客さまが満足するものを作りたいと思ったんです。広告を出稿する企業も、アルバイトに応募する利用者も、きちんと満足するようなサービスが、これまで本当にあったのかな、と感じていたからです」
アルバイトを探している人が満足するためには、掲載されている求人の数が多いほどよく、そのために企業が求人広告を出すことに対してお金がかからない「成功報酬型」が優れているのである。広告の出稿に費用がかからないのであれば、これまで掲載を差し控えてきた企業も募集情報を出してくれるかもしれない。掲載されるアルバイト情報が増えれば、サイトの利用者も増え、良い循環が生まれる。
リブセンスが急成長すると、業界ではその名が知れ渡った。と同時に、「成功報酬型」、「採用祝い金」を真似た競合も現れた。その数、一〇〇社以上。なかには、巨大資本を持つ企業が子会社を作って参入したケースもある。
だが、リブセンスはライバルに負けなかった。順調に売り上げと利益を伸ばしていったのである。その理由を訊ねたところ、村上は「ノウハウの蓄積」と「先行者利益」を挙げていた。
そのカギとなっているのが、検索結果で上位になるための「検索エンジン対策(SEO)」である。リブセンスは自社でSEOに取り組みそのノウハウを蓄積した。
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