なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか

日本版GOM構築の教科書
未読
なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか
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日本版GOM構築の教科書
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なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年12月04日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、マネジメントという切り口を通じて、「真のグローバル化」を学ぶための一冊である。

著者の田口 芳昭氏は、経営をグローバル化し、組織変革を成功させるためのマネジメントを、様々な業界に向けて行っている人物だ。グローバル化を進める多くの日本企業は、日本人駐在員に依存した経営モデルをとっている。だが、日本では少子高齢化が進んでおり、このままでは人材を海外に送り続けるのはむずかしい。そのため、グローバル企業は経営モデルを転換させなければならないと著者は断言する。

もちろん、提供する製品・サービス、市場環境によって、課題は変わってくる。しかし、どんなグローバル企業であっても、欧米の経営モデルを模倣するのではなく、日本企業独自の事業軸・地域軸を統括するグローバル本社機能の構築が必要不可欠だ。著者の主張は、シーメンス、BASF、LIXIL、日本板硝子、日本たばこ産業(JT)、京セラ、日立製作所といった、数多くの企業の分析に基づいており、「教科書」を謳うのも納得できる内容となっている。

日本語で書かれたGOM (グローバル・オペレーティング・モデル)に関する書籍は、現時点だとほとんどない。グローバル経営に携わる者にとっては、本書が必読書となるのは間違いないだろう。日本のグローバル企業が行うマネジメントの問題点への指摘、日本と海外のグローバル企業の比較分析、そして日本のグローバル企業はこれからどうすべきなのかという提言など、真のグローバル化をするためのヒントが、ぎっちり詰めこまれた好著だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

田口芳昭 (たぐち よしあき)
株式会社野村総合研究所
業務革新コンサルティング部部長
1992年東京工業大学大学院理工学研究科修了、野村総合研究所入社。2001年サンダーバード国際経営大学院MBA in International Management 修了。経営のグローバル化に向けた機能軸強化のためのチェンジマネジメント、クロスボーダーアライアンス・M&A後のPMI支援、企業統合のための業務・IT統合、PMO支援などを、自動車、化学・製薬、食品、商社、金融業界向けに行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本のグローバル企業は、日本人駐在員に依存する経営モデルから脱さなければならない。
  • 要点
    2
    海外のグローバル企業の本社は、利益を最大化するために、使用するインフラを指定し、一定のルールに基づいたコミュニケーションを行っている。
  • 要点
    3
    日本企業がGOMを構築するためには、海外のGOMのケースを模倣するだけでは不十分である。日本固有の事情を踏まえたうえで、日本型のGOM構築をめざすべきだ。
  • 要点
    4
    GOM構築を行うにあたっては、たんに作業タスクを並べてひとつひとつ推進していくのではなく、変革のためのプロセス設計を入念に行う必要がある。

要約

人依存の連邦経営モデルから脱する

駐在員に依存する経営モデルは通用しない
FlairImages/iStock/Thinkstock

現在、さまざまな日本企業でグローバル化が進んでいる。そうした企業でよく耳にするキーワードが「連邦経営」である。地域・事業ごとに拠点を築き、それぞれが自律的に事業規模を拡大する、という仕組みだ。

この経営モデルは、暗黙知を共有した日本人駐在員を海外拠点に送り、彼らに依存することで成り立っている。グローバル化を進める多くの日本企業は、海外に進出した当初からずっとこのモデルを取り続けている。

しかし、このような経営モデルで海外での事業規模を拡大しようとすると、日本から人材をどんどん供給する必要がでてきてしまう。少子高齢化が進む日本企業では、人材を恒久的に供給しつづけるのは困難だ。だからこそ、そのような日本人駐在員に依存するモデルから、海外人材も活用できるモデルに転換すべきである。

乗り越えるべき3つの壁
Michael Blann/DigitalVision/Thinkstock

人依存の「連邦経営」モデルの課題は、大きく3つに分類することができる。

1つ目は、「組織/ガバナンスの壁」である。駐在員に依存したグローバルな組織/ガバナンスの場合、事業・地域軸に情報が集中する。そのため、日本本社の機能軸は、物理的にはもちろん、情報量でも現場から離れてしまっている。「現状を分析し、問題・課題を発見し、対策を打つ」というマネジメントの基本動作に関して、事業・地域軸からの情報に頼らざるをえず、自律的な論点形成ができない状態に陥ってしまっているのである。

2つ目は、「業務/ITの壁」である。日本企業では多くの労働者が、上司の指示がなくとも自発的意思で業務を改善し、製品やサービスの品質を常に改善し続けようと努力する。その結果、どんどんと業務が分化・変化していく。この特性により、日本企業の製品は高い品質を保っているのだが、グローバルな現場では、日本人同士の「阿吽の呼吸」が分からない現地人材が、こうした業務プロセスに適合できないことが危惧される。また、IT化しようにも、業務が分化・変化しているため、システム設計に反映しづらくなっている。

3つ目は「人材/ビジョンの壁」である。(A)国内市場が縮小しているため海外で売上高を上げる必要があり、海外へ送る人材の必要性が増大している、(B)少子高齢化が進み、国内の人材確保が困難になっている、(C)社内の人口ピラミッドで一番多いバブル入社組が50代に入り、海外へのリソースシフトが難しくなっているうえに、それ以下の年齢層は、バブル崩壊やリーマンショックの影響で非常に人数が少ない――これら3つの要素が重なり、日本人だけではもはや、事業軸・地域軸・機能軸を支えられなくなってきた。

だからこそ企業は、日本人だけではなく、海外人材も含めて、採用・育成・人材流動性確保に踏み出す必要がある。その場合、海外人材を採用するだけでなく、将来のマネジメント層候補として、育成を進めていくことを念頭に置かなければならない。

海外グローバル企業のGOM構築

グローバル企業本社のありかたとは

日本のグローバル企業本社の場合、売り上げを拡大するための「ヒト・モノ・カネ(経営リソース)の提供」だけに注力し、その後は現地に任せっきりにしてしまう傾向がある。それに対して、海外のグローバル企業の本社は、使用するインフラを指定することで、統制のとれたコミュニケーションができるように徹底している。

海外のグローバル企業は、「組織/ガバナンス」「業務/IT」「人材/ビジョン」という3つのプラットフォームを明確に意識し、それぞれにルールやプロセス、ITシステムといった仕組みを組み込んでいる。これを、グローバル・オペレーティング・モデル(GOM)と呼ぶ。

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要約公開日 2016.10.21
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