現在、さまざまな日本企業でグローバル化が進んでいる。そうした企業でよく耳にするキーワードが「連邦経営」である。地域・事業ごとに拠点を築き、それぞれが自律的に事業規模を拡大する、という仕組みだ。
この経営モデルは、暗黙知を共有した日本人駐在員を海外拠点に送り、彼らに依存することで成り立っている。グローバル化を進める多くの日本企業は、海外に進出した当初からずっとこのモデルを取り続けている。
しかし、このような経営モデルで海外での事業規模を拡大しようとすると、日本から人材をどんどん供給する必要がでてきてしまう。少子高齢化が進む日本企業では、人材を恒久的に供給しつづけるのは困難だ。だからこそ、そのような日本人駐在員に依存するモデルから、海外人材も活用できるモデルに転換すべきである。
人依存の「連邦経営」モデルの課題は、大きく3つに分類することができる。
1つ目は、「組織/ガバナンスの壁」である。駐在員に依存したグローバルな組織/ガバナンスの場合、事業・地域軸に情報が集中する。そのため、日本本社の機能軸は、物理的にはもちろん、情報量でも現場から離れてしまっている。「現状を分析し、問題・課題を発見し、対策を打つ」というマネジメントの基本動作に関して、事業・地域軸からの情報に頼らざるをえず、自律的な論点形成ができない状態に陥ってしまっているのである。
2つ目は、「業務/ITの壁」である。日本企業では多くの労働者が、上司の指示がなくとも自発的意思で業務を改善し、製品やサービスの品質を常に改善し続けようと努力する。その結果、どんどんと業務が分化・変化していく。この特性により、日本企業の製品は高い品質を保っているのだが、グローバルな現場では、日本人同士の「阿吽の呼吸」が分からない現地人材が、こうした業務プロセスに適合できないことが危惧される。また、IT化しようにも、業務が分化・変化しているため、システム設計に反映しづらくなっている。
3つ目は「人材/ビジョンの壁」である。(A)国内市場が縮小しているため海外で売上高を上げる必要があり、海外へ送る人材の必要性が増大している、(B)少子高齢化が進み、国内の人材確保が困難になっている、(C)社内の人口ピラミッドで一番多いバブル入社組が50代に入り、海外へのリソースシフトが難しくなっているうえに、それ以下の年齢層は、バブル崩壊やリーマンショックの影響で非常に人数が少ない――これら3つの要素が重なり、日本人だけではもはや、事業軸・地域軸・機能軸を支えられなくなってきた。
だからこそ企業は、日本人だけではなく、海外人材も含めて、採用・育成・人材流動性確保に踏み出す必要がある。その場合、海外人材を採用するだけでなく、将来のマネジメント層候補として、育成を進めていくことを念頭に置かなければならない。
日本のグローバル企業本社の場合、売り上げを拡大するための「ヒト・モノ・カネ(経営リソース)の提供」だけに注力し、その後は現地に任せっきりにしてしまう傾向がある。それに対して、海外のグローバル企業の本社は、使用するインフラを指定することで、統制のとれたコミュニケーションができるように徹底している。
海外のグローバル企業は、「組織/ガバナンス」「業務/IT」「人材/ビジョン」という3つのプラットフォームを明確に意識し、それぞれにルールやプロセス、ITシステムといった仕組みを組み込んでいる。これを、グローバル・オペレーティング・モデル(GOM)と呼ぶ。
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