間違いだらけのビジネス戦略

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間違いだらけのビジネス戦略
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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年12月01日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

私たちを取り巻くビジネスの環境は、予想以上の早さで変化している。有名大手企業も、技術の進歩に負けないようにチャレンジを求められる時代だ。私たちは常に変化するビジネスの現場から、何を学び取ればいいのだろうか。

そのような問いに対してヒントを与えてくれるのが、大手ニュースサイト「ビジネスジャーナル」に連載された、本書の著者である山田修氏のコラム「間違いだらけのビジネス戦略」である。本書はそのコラムを、7つのテーマに分けて再構成し、まとめあげた一冊だ。

著者は20年以上に渡って、外資4社及び日系2社で社長を歴任しており、現在は、ビジネス評論家や経営コンサルタント、MBA経営代表取締役として活躍している人物である。ビジネスの肌感覚を熟知している著者は、「できるだけタイムリーに」「できるだけ正確に」「できるだけオリジナルに」という3点にこだわって、コラムを執筆し続けているという。そのため、本書を読めば、「2015年のビジネスの現場では何が起きていたのか」をリアルに感じ取ることができるだろう。

業績を落としていた会社をV字回復させ、「企業再生経営者」とまで呼ばれている著者は、世間から注目を集める企業の動向から何を感じたのか。ぜひ、著者の「戦略的観点」という視座から、一緒に現代のビジネスシーンを覗きこんでみていただきたい。

ライター画像
流石香織

著者

山田 修(やまだ おさむ)
ビジネス評論家
20年以上に渡り外資4社及び日系2社(ポントデータ・ジャパン、王氏港建日本、フィリップス・ライティング、ミード、キッチンハウス、トーラス)で社長を歴任。フィリップス・ライティング社では、半減していた年商を3年で3倍増。6年間赤字だったミード社では就任半期で黒字化するなど、「再生請負経営者」と呼ばれた。現在は、戦略策定指導の第一人者として、社長個別指導、講演、経営セミナー、企業内の幹部研修などで全国を飛び回る。経営人材育成を目的とした「経営者ブートキャンプ」の主任講師を務める。学習院大・修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)満了(社長在任中)。国際戦略経営研究学会員。
『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)(日経新聞ビジネス書ベストセラー2位)、『あなたの会社は部長がつぶす!』フォレスト出版(アマゾンベストセラー総合1位)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』プレジデント社(同総合1位)、『MBA社長のロジカルマネジメント』講談社(同総合1位)など著書・論文多数。テレビ出演も多い。
ビジネスジャーナル連載コラム「山田修の間違いだらけのビジネス戦略」
http://biz-journal.jp/series/osamu-yamada-business/

本書の要点

  • 要点
    1
    現在のモスバーガーは、長期低迷時代が続いている。モスが現状を打破するためには、盛りあがりを見せる海外の合弁会社に経営権を委譲したほうがいい。
  • 要点
    2
    ヨドバシカメラは、むやみに店舗数を増やさないことで、社員教育を充実させ、さらにIT化に注力したことで、店頭と通販サイトを上手くつなぐことに成功した。
  • 要点
    3
    リユース業界という新たな市場を生み出したからこそ、今日のハードオフの繁栄がある。
  • 要点
    4
    今後10~20年の間に、アメリカの74パーセントの労働者がコンピュータに仕事をとられることになるだろう。

要約

企業が生き残るための方策

低迷時代に突入したモスバーガー
draghicich/iStock/Thinkstock

大手ファストフード店の中で、株式会社モスフードサービスの運営するモスバーガー(以下、モス)と、日本マクドナルド株式会社の運営するマクドナルド(以下、マック)を比べると、「マックは不調で、モスは好調」というイメージが強い。

しかし売上高を見てみると、モスの成長は伸び悩んでいる。ここ20年間の店舗の数を見ても、マックに次いで2位の位置にとどまりつづけていることからも、それは明らかであろう。

1998年以降から続く、櫻田厚現社長時代のモスを「成熟期」と呼ぶ人もいるが、著者の見解は異なる。著者は、前社長であった故・櫻田慧氏の時代までを成長時代とし、現在は長期低迷時代が続いていると考えている。

この原因は、慧氏から厚氏への社長交代したことにある。慧氏はもともとカリスマ経営者として有名で、加盟店から信頼と尊敬が厚かった。しかし慧氏亡き後、厚氏に社長交代したことで、本部と加盟店のパワーバランスが崩れてしまった。そして、それまで10%前後あった営業利益率が急減してしまったのだ。

外部に経営を任せなければモスは変わらない

モスの海外店舗323店(15年6月末)の大部分は、アジアとオーストラリアに集中している。なかでも台湾では240店と、最大の店舗数を構えている。しかしながら、この海外展開を実質的に担当しているのはモスではなく、台湾での合弁会社「安心食品服務股ヒン有限公司」だ。台湾での店舗はすべて安心食品の直営で、他のアジアやオーストラリアのオペレーションも、安心食品服務が展開している。

現在、モスは安心食品服務に3割ほどしか出資しておらず、現地に派遣されている社員も2名のみにとどまっている。実質的に、安心食品服務は現地パートナーの力のみで経営されているといっていい。好調な海外展開を担っているのは、モスフーズではないわけだ。

日本ではマック離れが叫ばれて久しいが、マックを離れていった層をうまく取り込むことができていない現経営陣に、本格的な反転攻勢をしかけるための策があるとは思えない。モスが現状を打破するためには、活発に展開している安心食品服務に、早い段階で経営を移譲したほうがいいだろう。かつて、米サウスランド・アイスはセブン-イレブン(以下、セブン)を生み出し、イトーヨーカ堂(当時)に日本におけるセブンのローカルフランチャイザー件を賦与した。ところが、イトーヨーカ堂はその後、サウスランドを子会社にし、現在のサウスランドは、セブンとイトーヨーカ堂を傘下に収めるセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社となっている。モスも同じ手法で発展をめざすべきではないだろうか。

【必読ポイント!】 名門企業の独自戦略

むやみに数を増やさず、じっくりと人を育てる
RomoloTavani/iStock/Thinkstock

株式会社ヨドバシカメラ(以下、ヨドバシ)は、強固なビジネスモデルを持っている。実際、家電量販大手の2015年3月期決算による、対前年比増減の結果からも、ヨドバシが家電量販大手の中で、際立って優れた経営実績を残していることがわかる。しかも2010年3月期以来、7~8%台の経常利益率を続けているのだ。これは尋常なことではない。

その秘密は、ヨドバシの独自の経営戦略にある。他の大手家電量販店が多店舗展開する中で、ヨドバシは、たとえ業態が大きくなろうとも、むやみに店舗数を増やさなかった。しかも、大都市の駅近にだけ店舗を構えることにこだわり、本書が出版された段階では21店舗だけしかない。これはヨドバシが非上場の同族企業だからこそできる戦略である。

こうして店舗数を抑えることで、社員数を急激に増やす必要がなくなり、店員の教育をしっかりと行うことができる。実際、店員の在社平均年齢は高く、商品知識や接客技術は家電量販店の中でも群を抜いている。JCSI(日本顧客満足度指数)でも家電量販店の分野において、5年連続1位を獲得している。店舗数拡大に走ったヤマダ電機が、「日経ビジネス」(日経BP社)の顧客満足度調査で毎年ワースト1となっているのとは対照的だ。

忌避されているものを逆に利用する
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

さらに、ヨドバシのIT化戦略にも注目したい。

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要約公開日 2016.09.21
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