ドラッカーから学ぶ多角化戦略

御社の閉塞感を打ち破る多角化手引書
未読
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ドラッカーから学ぶ多角化戦略
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年08月12日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「多角化経営」と聞くと、大企業の経営戦略というイメージがあるかもしれない。しかし本書で説かれている「多角化戦略」に触れると、それは大企業の専売特許ではないことがよくわかる。「多角化」とは企業規模にかかわらず、顧客のニーズに合わせて事業のありかたを柔軟に変えていくことであり、すなわち本質を見据えた企業活動そのものともいえる。意思決定のスピードが速く小回りが利くという点では、むしろ中小企業にこそ適した戦略といえる。

多角化といっても、現在の主力事業とまったく関係のないことを始めなければいけないわけではない。現在の事業でカバーしきれていない市場にターゲットを広げたり、ニーズのある関連商品を拡充したりと、今やっていることの延長上でできる多角化は、多数ある。現場の声を聞き、どこに多角化のチャンスがあるのか。本書ではそのさまざまな手法について詳しく触れているため、多角化のヒントを見つけることができるだろう。

どの企業でも、「本業」と認識している事業があるだろう。しかしそれを「本業」として守り続けること自体が目的になってしまうことは、大変危険である。事業の向こうにいる顧客も、それを取り巻く社会も常に変化し続けているからだ。顧客に提供するサービスや価値、行う事業も、変化するのは自然なことといえる。「本業」を大切にしながらも、顧客に愛され続けるために常に変化し続ける。本書はその方法論を具体的に指南する一冊である。

著者

藤屋 伸二(ふじや・しんじ)
藤屋マネジメント研究所所長・差別化戦略コンサルタント
1956年福岡県生まれ。1996年に藤屋マネジメント研究所設立。ピーター・ドラッカーの著書を200回以上読み込んで独自のコンサルティング手法を編み出し、これまでに200社以上の業績伸長やV字回復を支援してきた。現在、「藤屋式ドラッカー活用法の普及」を事業目的にかかげ、おもに中小企業経営者向けにドラッカーの活用法を伝える【藤屋伸二の創客塾】を全国各地で主宰。ほかにも、差別化戦略・マーケティング戦略・中期経営計画の作成指導、社員研修、セミナー・講演、執筆活動などをおこなっており、「日本一わかりやすくドラッカーを伝える男」と呼ばれる。ドラッカー関連の著書・監修書21冊(4冊は海外でも発行)の累計は206万部を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    事業の本質は「顧客のニーズに応えていくこと」である。しかし市場や顧客ニーズは常に変化しており、現在の主力事業がこれからも続くとは限らない。現状に固執せず、新しい市場や商品を開拓し、事業を多角化していくことで企業の可能性は大きくなる。
  • 要点
    2
    多角化を検討する場合には、自社の強みを認識したうえで「共通の技術」、「共通の市場」を活かせる事業へ進出することが望ましい。
  • 要点
    3
    多角化は組織づくりのチャンスでもある。社員が積極的にチャレンジできる「よい社風」を作ることが大切である。

要約

企業存続の可能性を広げる「多角化戦略」

「本業」にとらわれるな
Olivier Le Moal/iStock/Thinkstock

「本業」には2つの意味がある。ひとつは「売上と利益が最も多い事業」、もうひとつは「創業時からの事業」だが、経営の場で使われる場合は後者を指すことが多い。しかし市場環境や顧客ニーズが激変する中、「創業時からの事業」に固執して会社を維持、発展することができるのか。よく「新規事業はリスクが高く、既存の事業はリスクが低い」と考える人がいるが、著者はこれに異を唱える。市場や顧客ニーズが変化する中で、「ニーズに応じて変化しないことが最大のリスク」なのである。著者が考える「本業」とは、これからも利益があがり続ける事業のことである。

ドラッカーの多角化戦略

ドラッカーは著書『創造する経営者』の中で次のように述べている。「専門化と多角化に関連がなければ、生産的とはいえない。専門化だけでは個人営業に毛が生えた程度で、一人の人間が死ねば消滅する。しかし専門化せず、卓越性もなしに多角化しているだけでは、マネジメントできなくなる。推奨するのは選択と集中(専門化)を前提とした多角化である」。ドラッカーの指す多角化とは、自社の強み(ノウハウ)と共通の技術か共通の分野への進出であり、これを「選択と集中」と表している。

「選択と集中」の判断基準になるのが「事業の定義」(事業領域の決定)と「強みの定義」である。例えば同じフィルム会社でも、事業領域を「写真フィルム」としたコダック社はデジタル化の環境変化に対応できず倒産の道を辿った。一方、「フィルムと光学」を選択した富士フィルムは2つのノウハウを生かせる事業に集中し優良企業として存続している。

また「強み」とは、「差別化を生み、利益をあげるノウハウ」のことであり、強みを定義することで、「事業展開の核」が決まり「進出可能な事業範囲」も同時に定まる。

多角化戦略のさまざまな方向性

現在の主力事業の強みを発展させて多角化しようとするとき、いくつかの方向性が考えられる。本書では「市場」「技術」と「既存」「新規」の2つの軸を組み合わせた、4つの多角化戦略に分類されている。すなわち「細分化による多角化(既存市場に既存の技術で多角化する)」、「商品開発による多角化(既存市場に新規の技術で多角化する)」、「市場開拓による多角化(新規市場に既存の技術で多角化する)」、「飛躍による多角化(新規市場に新規の技術で多角化する)」である。

ほかにも、多角化した事業からさらに展開を広げる方向、現在の事業を川上や川下へ展開していく方向など、その可能性は多様に広がっている。

【必読ポイント!】 多角化戦略を実践する

事業に乗り出す前に
violetkaipa/iStock/Thinkstock

事業の多角化をすすめる前に、プランの全体像を描く必要がある。いつまでにどの程度まで到達するかの目標を設定し、「ビジョンを描く」。次に市場全体をとらえ、市場を細分化し、市場全体の中での位置づけ、特徴づけをすることにより「経営方針を定める」。そして、

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要約公開日 2016.09.24
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