未来学者アルビン・トフラーの『第三の波』は、著者の、未来に対するイメージを一変させた一冊である。この本によると、人類が経験した「第一の波」は、農業革命後に生じた定住農耕社会であり、「第二の波」は産業革命後の社会だという。そして、「第三の波」とは、人々が双方向の世界の一員となり、共通の関心に基づいたコミュニティを築く情報社会を指す。トフラーの予言は的中し、驚異的なスピードで、いわばインターネット時代版のトフラーの波が到来している。著者は、これになぞらえて、インターネットの発展を三つの波にたとえた。
インターネットの第一の波は、オンラインの世界と人々をつなぐ土台を構築する時代であり、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどを築いてきたシスコ、マイクロソフト、アップル、そしてアメリカ・オンライン(AOL)などが、その担い手となった。彼らは、なぜインターネットが人々にとって必要なのかを周囲に理解させることが求められた。つづいて第二の波は、グーグルやヤフーなどの検索エンジンや、ソーシャルネットワークなどの「サービス型ソフトウェア」が台頭した時代を指し、事実上、無限の拡張可能性を秘めている。
そして、現在到来しつつある第三の波とは、インターネットを特徴としない製品でもインターネットに接続可能な時代を指す。つまり、IoT(モノのインターネット)という概念が限定的だと見なされ、より広範なInternet of Everything(あらゆるモノのインターネット)が実現する。この時代の起業家は、医療や教育システム、食といった、人々の生活に多大な影響を与える産業に挑戦することになる。そのため、多分野にわたるパートナーシップを築き、参入障壁となる政策にうまく対応しなければならない。こうした未来の中でチャンスをものにするには、インターネットの第一の波を乗り越える際の教訓を知ることが不可欠となる。
第三の波に立ち向かうスタートアップは、アメリカ史上、最も心躍る機会を得ることになるだろう。この波に乗って起業を成功させるには、3つのPが欠かせない。それは、パートナーシップ(Partnership)、政策(Policy)、粘り強さ(Perseverance)である。
まず、第三の波に乗るには、その産業の意思決定者、つまり「ゲートキーパー」と建設的かつ協力的な「パートナーシップ」を築くことが肝要である。いかに製品が優れていても、独力で進もうとすれば大きな成功は望めない。教育を例にとると、教室での学習に関連する製品の認可においては、各学区に意思決定者が存在する。これは医療、交通、食品業界などでも同じだ。彼らの信用を得るには、まずは小さなパートナーとの連携を増やし、社内の経営陣を強化することが有効となる。
次に、第三の波に乗る産業は、規制に守られていることが多い。たしかに、安全性に不安のある自動運転車が高速道路を走ることに多くの人が抵抗するだろうし、風力発電所を自由に建設することは不可能だ。規制は厳然と存在し、政府が常に影響力を持つ。
そこで、起業家たちは政府と関わり合い、自分たちが向き合うことになる「政策」に精通していなければならない。例えば、新しい融資プラットフォームをつくるには、証券取引委員会の承認が必要となる。そのため、起業家は政策に詳しい専門家を雇うか頼るかして、規制問題への対処策を含めた市場進出戦略を示さなければ、資金調達を見込めなくなるだろう。
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