サードウェーブ

世界経済を変える「第三の波」が来る
未読
サードウェーブ
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世界経済を変える「第三の波」が来る
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サードウェーブ
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン

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出版日
2016年06月30日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「サードウェーブ」とは何か。未来学者トフラーが提唱した「第三の波」(情報化社会の到来)になぞらえ、インターネットの発展を三つの段階に分け、今後の段階を「第三の波」と表現したものだ。あらゆる産業や製品がネットに接続される「サードウェーブ」と、起業家はどう向き合っていけばいいのか。

著者は、アメリカ・オンライン(AOL)の共同創業者のスティーブ・ケース氏だ。ネット黎明期に世界にインターネットを普及させ、タイム・ワーナーとの史上最大の企業合併を成し遂げた伝説の起業家である。本書は、著者が自身の成功と失敗を振り返り、インターネットビジネスの未来を余すことなく語った一冊だ。世紀の合併劇の舞台裏が次々と明らかにされ、自伝的経営書としても非常に興味深く読める。

著者によると、第三の波に立ち向かうには、オンラインの世界にインフラを築くうえで、様々な障壁を打ち破る必要があった第一の波の教訓が不可欠になるという。なぜなら今後の起業家は、日常生活に多大な影響を与える産業に挑戦することになるため、多分野にわたるパートナーシップ構築に迫られるからだ。

第一の波の激動の中で栄光と挫折を味わってきた著者の言葉は、ほとばしる情熱に満ちており、起業家やビジネスリーダーにとって力強いエールとなってくれる。世界経済を変える第三の波は、すでに今あなたの中に眠る「イノベーター」に呼びかけているだろう。その波を乗りこなす方法を、新時代に向けた指南書である本書から掴み取っていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

スティーブ・ケース
Steve Case
アメリカ・オンライン(AOL)の元CEOで共同創設者。インターネット・プロバイダのパイオニア的存在であるAOLは1990年代に急成長を遂げ、2000年1月にメディア大手のタイム・ワーナーと合併。「AOLタイム・ワーナー」の時価総額は当時3500億ドルを超え、米国史上最大の合併と言われた。ITバブル崩壊を引き金とした経営不振を機に、2003年同社の会長職を辞任(2009年合併解消)。現在は投資会社レボリューションの会長兼CEOを務める傍ら、妻ジーンと創設したケース財団の会長として若き起業家を支援する活動に尽力している。「グローバル・アントレプレナーシップのための大統領特使(PAGE)」メンバー。

本書の要点

  • 要点
    1
    現在到来しつつある第三の波によって、より広範なInternet of Everything(あらゆるモノのインターネット)が実現する。
  • 要点
    2
    今後の起業家たちは、人々の生活に多大な影響を与える産業に挑戦することになる。起業の成功においては、パートナーシップ(Partnership)、政策(Policy)、粘り強さ(Perseverance)の3つのPが欠かせない。
  • 要点
    3
    第三の波によって、あらゆる都市が新たなイノベーションの発信地に変貌し、社会的利益と金銭的な利益の両方をめざす「インパクト投資」が増えると予測されている。

要約

はじめに

第三の波の到来
EpicStockMedia/iStock/Thinkstock

未来学者アルビン・トフラーの『第三の波』は、著者の、未来に対するイメージを一変させた一冊である。この本によると、人類が経験した「第一の波」は、農業革命後に生じた定住農耕社会であり、「第二の波」は産業革命後の社会だという。そして、「第三の波」とは、人々が双方向の世界の一員となり、共通の関心に基づいたコミュニティを築く情報社会を指す。トフラーの予言は的中し、驚異的なスピードで、いわばインターネット時代版のトフラーの波が到来している。著者は、これになぞらえて、インターネットの発展を三つの波にたとえた。

インターネットの第一の波は、オンラインの世界と人々をつなぐ土台を構築する時代であり、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどを築いてきたシスコ、マイクロソフト、アップル、そしてアメリカ・オンライン(AOL)などが、その担い手となった。彼らは、なぜインターネットが人々にとって必要なのかを周囲に理解させることが求められた。つづいて第二の波は、グーグルやヤフーなどの検索エンジンや、ソーシャルネットワークなどの「サービス型ソフトウェア」が台頭した時代を指し、事実上、無限の拡張可能性を秘めている。

そして、現在到来しつつある第三の波とは、インターネットを特徴としない製品でもインターネットに接続可能な時代を指す。つまり、IoT(モノのインターネット)という概念が限定的だと見なされ、より広範なInternet of Everything(あらゆるモノのインターネット)が実現する。この時代の起業家は、医療や教育システム、食といった、人々の生活に多大な影響を与える産業に挑戦することになる。そのため、多分野にわたるパートナーシップを築き、参入障壁となる政策にうまく対応しなければならない。こうした未来の中でチャンスをものにするには、インターネットの第一の波を乗り越える際の教訓を知ることが不可欠となる。

【必読ポイント!】 今後の起業家に必須の「3つのP」

パートナーシップ(Partnership)

第三の波に立ち向かうスタートアップは、アメリカ史上、最も心躍る機会を得ることになるだろう。この波に乗って起業を成功させるには、3つのPが欠かせない。それは、パートナーシップ(Partnership)、政策(Policy)、粘り強さ(Perseverance)である。

まず、第三の波に乗るには、その産業の意思決定者、つまり「ゲートキーパー」と建設的かつ協力的な「パートナーシップ」を築くことが肝要である。いかに製品が優れていても、独力で進もうとすれば大きな成功は望めない。教育を例にとると、教室での学習に関連する製品の認可においては、各学区に意思決定者が存在する。これは医療、交通、食品業界などでも同じだ。彼らの信用を得るには、まずは小さなパートナーとの連携を増やし、社内の経営陣を強化することが有効となる。

政策(Policy)
MaxMichelMann/iStock/Thinkstock

次に、第三の波に乗る産業は、規制に守られていることが多い。たしかに、安全性に不安のある自動運転車が高速道路を走ることに多くの人が抵抗するだろうし、風力発電所を自由に建設することは不可能だ。規制は厳然と存在し、政府が常に影響力を持つ。

そこで、起業家たちは政府と関わり合い、自分たちが向き合うことになる「政策」に精通していなければならない。例えば、新しい融資プラットフォームをつくるには、証券取引委員会の承認が必要となる。そのため、起業家は政策に詳しい専門家を雇うか頼るかして、規制問題への対処策を含めた市場進出戦略を示さなければ、資金調達を見込めなくなるだろう。

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要約公開日 2016.10.27
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