「勘違いする力」が世界を変える。の表紙

「勘違いする力」が世界を変える。


本書の要点

  • 科学ベンチャーをさらに発展させるためには、サイエンスとビジネスを結びつける「コミュニケーター」の存在が必要だ。

  • 起業を成功させるためには、中軸となる人物が3人いなければならない。それぞれが互いの弱みを補い、強さを生かせる環境を整えるべきだ。

  • ベンチャーは少数精鋭でメンバーを揃え、その領域の「核」になる部分を押さえるべきである。「核」を押さえておけば中心的な存在になれるだけでなく、他業種との連携もしやすくなる。

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【必読ポイント!】 ミドリムシで上場したバイオベンチャー

科学ベンチャーの両輪を回すには

Phil jackson/iStock/Thinkstock

世界初のユーグレナ(ミドリムシ)の食用大量培養に成功し、「ミドリムシが地球を救う」ことを信念にかかげる株式会社ユーグレナの出雲 充(いずも みつる)代表取締役社長は、もともとサイエンスで起業するつもりはなかったという。しかし大学1年生の頃、夏休みを利用してバングラデシュのグラミン銀行でインターンをした出雲氏は、現地の人達が栄養問題で苦しんでいることを知ることとなる。バランスの良い栄養が取れず、多くの命が失われていく現状を憂いた出雲氏は、その後文学部から農学部に移った。栄養問題を解決するためにはサイエンスが必要不可欠だからだ。大学卒業後、一度は就職したものの、すぐに退職した出雲氏は、課題解決の糸口を探るため、多くの先生を訪ねていった。そしてそのなかで、ミドリムシの栄養価の高さに着目した。科学者はまず、ミドリムシの生態を解明したがるものだ。出雲氏のように「みんなに配ろう」という発想はなかなか出てこない。科学者を巻きこみ、実際に行動を起こしてはじめて、科学ベンチャーはうまく動きはじめるのである。

日本での起業はいいことばかり

米国の起業を取り巻く環境はすばらしく、一方で日本では起業がしにくいとよく言われている。しかし、出雲氏はまったく逆の考えだ。米国の場合、ベンチャーがユニークなテクノロジーを持っていても、GoogleやFacebookといったメガベンチャーが早い段階で取りこんでしまい、死蔵されることも少なくない。しかし、日本での起業は創業期にとても苦労することになるものの、一度実績ができはじめると、大企業から個人まで、多くの人々が手助けしてくれる。そのため、日本から次々とすばらしいベンチャー企業が出てくる可能性は十分あると出雲氏は語る。特にミドリムシの場合、競合がいないため、大成功しても誰も困らないのも大きい。他社や大学の技術、アイデアを組みあわせて技術革新を起こそうとする「オープンイノベーション」を成功させるためには、ミドリムシのように、大企業と競合しないアイデアや技術が最適なのだ。

科学をビジネスに育てる方法

altrendo images/Stockbyte/Thinkstock

日本でも、サイエンスやテクノロジーをコア技術にしたベンチャーが育つ土壌が育ちつつある。その土壌をさらに豊かにするためには、サイエンスとビジネスを融合させる「コミュニケーター」の存在が必要だ――本書の編者であり、株式会社リバネスの丸 幸弘代表取締役CEOはそう語る。出雲氏にとってのコミュニケーターがまさに丸氏であった。経営には技術だけでなく、商品・サービス化のアイデア、人材ネットワークなど、広範な知識や情報が求められる。それらを提供するのがコミュニケーターの役割だ。コミュニケーターとして1番大切なのは、科学者が何に対して情熱を燃やしているかを引き出すことだと丸氏は考えている。

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要約公開日 2016.11.07
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