業種を問わず、評判がよく好調な会社やお店は必ずといってよいほどお客へお礼はがきを出している。もちろん手書きである。担当者にとっては面倒な作業だが、このひと手間をかけるかかけないかは、実は業績を大きく左右する。
では、はがきを出すことでお客に与える印象は、どのようなものだろうか。①気分がよくなる。自分がその会社の経営に役に立つことができたという満足感、あるいは「よいお客である」と認められた心地よさを与える。②気分がよくなった結果「この会社は信用できる」「この担当者は親切であり、信頼のおける人間だ」という意識が芽生える。③信用・信頼を感じたら、さらに「この会社・担当者なら商品に不具合が起こってもすぐ対応してくれるだろう」という安心感につながる。こうした感情はやがて、お客の他社への流出を防ぐとともに、「知人にこの会社に紹介しよう」という「お返し」の気持ちにもつながり、業績の向上へと繋がっていくのである。
著者は、独立開業するまで16年間、法人営業の仕事をしていたが、辞める前の数年間、著者の売上は社員平均の7.7倍に達していたという。この実績を出すのに役立ったのが、「訪問面会件数」を多くすることと「お礼はがきを出すこと」だという。
著者はあるときランチェスター戦略の講演に参加してその中身にとても感銘を受け、自身の仕事へと応用しようと試みた。「ランチェスター法則」を販売の仕事に応用すると、個人の販売力は「訪問面会件数の2乗×質」となる。つまり売上を上げるには、より多くの会社を訪問し、経営者や決定権者に合うことである。営業時の移動時間を極力削減し、訪問面会の件数を増やした結果、売上は伸び、社員平均の6倍を上回った。
しかし、この方法だけでは次第に売上は伸び悩むようになった。営業に回せる時間が限界に達してこれ以上、訪問件数を増やすことが難しくなったためである。
何か良い方法はないかと思案していたとき、生命保険の仕事で高い実績を上げていたアメリカ人、フランク・ベドガーの名著『私はどうして販売外交に成功したか』の中に解決の手がかりを見出した。その本には「契約してもらったお客にはお礼の手紙を出すべき」とあった。お客にお礼の手紙を出すことは販売力の強化につながる。そう信じた著者だが、問題があった。文字が下手な上に、文章に自信がなかったのである。
そこで編み出したのが、電報のようにマス目型を使い、100字以内に文字を収める「電報はがき」だ。マス目に一字一句丁寧に書いていけば、下手な字でも見やすくなる。簡潔な文章でも十分埋まる。お客と面会したあと、すぐ出すのがカギである。
例えば、飛び込みで新規開拓し、商品購入の見込みがありそうなお客には「このたびはご多忙中にもかかわらず、面会頂きましてありがとうございました。社長様の会社はとてもきれいに整理されていました。これは社長様が事業に打ち込んでおられるからだと思いました。ご発展お祈りします」と書く。1ヶ月後くらいに再訪問すると「先日、珍しいはがきをくれた人ですね」と、ほとんどの社長が気軽に面会してくれた。お礼はがきには、2度目の面会がとてもスムーズになる、という効果があるのだ。
しかし、そのようなお礼はがきは、以前に契約してくれたお客には効果がない。そこで著者が思いついたのは、年賀はがき以外に客の仕事に役立つ情報を印刷し郵送する「定期はがき」だ。
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