仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方

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仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方
出版社
出版日
2022年03月15日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

上司に頼まれていた仕事をすっかり忘れていた、重要な資料に誤りがあるのを見落としていた、指示されたとおり資料を作ったはずなのに、全く違うと叱られた、など仕事において大なり小なりミスはつきものだ。そのようなミスの発生原因と対策について、「脳」という視点から解き明かすのが本書である。

本書では、ミスには記憶に関するメモリーミス、注意力に関するアテンションミス、「伝えたつもり」「わかったつもり」になってしまうことで生じるコミュニケーションミス、そして誤った判断を下すジャッジメントミスの四種類に分類している。そして興味深いのは、それらのミスを「起きてはならない」ではなく、脳の特性上「起こってしまうもの」と想定しているという点だ。人の記憶力には限界がある。誤った情報を記憶してしまったり、思い込みによって記憶が上書きされたりすることもある。また「早めに頼む」と指示しても、相手によって「早め」が指すのが一時間以内なのか今日中なのかは異なる。そうした前提を踏まえずに自分の思うままに仕事を進めようとしたり一方的に意見を伝えたりするのでは、同じようなミスを何度も繰り返してしまうだろう、というわけだ。

仕事の精度を高め、円滑に進めるためにはどのような考えが必要かを学ぶのもよし。部下が陥りやすいミスのパターンを知り、どう指導すればいいのかに思いを巡らすのもよし。

ミスが起こる脳の仕組みについて、役立つ知識が満載の一冊である。

ライター画像
下良果林

著者

宇都出雅巳(うつで まさみ)
1967年、京都府生まれ。東京大学経済学部卒。出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立し、トレスペクト経営教育研究所(現・トレスペクト教育研究所)設立。30年にわたり、心理学や記憶術、速読を実践研究し、脳科学、認知科学の知見も積極的に取り入れた独自のコミュニケーション法・学習法を確立。企業研修やビジネスマン向けの講座・個別指導を行う。2021年に公認会計士試験合格、現在は都内の監査法人に勤務。専門家サイト・オールアバウト「コーチング・マネジメント」ガイド。著書は『「1分スピード記憶」勉強法』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『どんな本でも大量に読める「速読」の本』(大和書房)、『ミスしない大百科』(共著、SBクリエイティブ)ほか多数。
ブログ「だれでもできる速読勉強術」:https://ameblo.jp/kosoku-tairyokaiten-ho/

本書の要点

  • 要点
    1
    脳の一時記憶保管庫「ワーキングメモリ」の容量は小さく、直ぐに新しい情報に上書きされてしまう。記憶のミスは、脳の限界が原因で「忘れる」前提で対策を講じる必要がある。
  • 要点
    2
    視野が狭くなり、視野の範囲外のことを見落とすミスを防ぐには、注意すべき項目を事前に決めておく「フレームワーク」の手法が有効である。
  • 要点
    3
    脳には「速い思考」「遅い思考」の二つの思考回路が存在する。「速い思考」は優秀な自動プログラムのように直感的に判断を下すが、誤っている可能性があるため、意識的かつ論理的な「遅い思考」で検証するプロセスが必要である。

要約

「メモリーミス」の原因と対策

メモリーミスが起こる原因
nengredeye/iStock/Thinkstock

メモリーミスとは「上司の指示を忘れる」「書類の置き場所を忘れる」といった記憶そのものが原因で起こるミスのことである。このようなメモリーミスは、記憶に対する過信、つまり「しっかり覚えた」「忘れないだろう」という思い込みに対し、あっさり忘れてしまうという「現実」とのギャップから発生するものである。

記憶に関する研究の草分けともいえる「エビングハウスの忘却曲線」によれば、「覚えた」と思ってから20分後には覚えたことの42%を忘れてしまい、1日後には74%を忘れてしまうのである。この研究結果から、自分の記憶力を過信してはならないことを、強く認識しなければならない。

また最近では、研究が進み「覚えた直後に急速に忘れてしまう」ことの原因も判明してきている。記憶のひとつである「ワーキングメモリ」は脳のメモ帳と例えられ、一時的に記憶が貯蔵される領域となっている。例えば本を読むとき、直前の文章の内容を記憶しておかないと読んだそばから忘れてしまい、読み進めることはできない。会話の際も、相手が発した言葉を一時的に覚えているからこそ、言葉をつなぎながら話の内容を理解することができる。そのような場合にワーキングメモリは活躍している。

しかしこの一時的な記憶の保管場所である「ワーキングメモリ」の容量はとても小さく、貯蔵できる物事は、せいぜい7つ前後(7±2)と言われている。「しっかり覚えた」と思い込んでいたことも、新しいことを記憶するために次々に追い出されてしまう。しかも職場には常に新しい刺激や情報が飛び交っているので、この傾向は強くなる。

メモリーミスを防ぐには

こうした記憶のミスは脳の限界によるものであり、したがって「忘れない」ではなく「忘れるものだ」という前提に立って対策を講じるべきである。どうしたら忘れる自分をフォローできるか、という視点の切り替えが重要となる。

そもそもビジネスシーンでは、受験や試験と異なり、ほとんどの場合で「カンニング」が許されている。ノートやメモは使い放題、スケジューラーに予定を入れておけば自動で通知されるし、人前で話すプレゼンはパワーポイントを見ながら行える。「覚えておかなければ」と思い込むのではなく、このような外部の補助ツールを効率的に活用し、ワーキングメモリから記憶が抜け落ちてもフォローができる状態にしなければならない。

ワーキングメモリは短期的に記憶を保存する役割だけでなく、保存された情報を処理する「作業台」の役割も持っている。覚えておかなければならないことが多ければ多いほど、作業スペースが狭くなってしまい、注意力が散漫になって情報処理ができなくなってしまう。外部の補助ツールを用いてワーキングメモリの情報を削減すると、その分仕事の精度やスピードが向上するのである。

上司が新人に対し「メモを常備しろ」と口うるさく言うのは、新人時代は覚えるべきことが沢山あり、頭に入れても忘れてしまいがちだからである。そして、新人のころからメモすることを習慣付けていれば、今後より高度な業務を並行して進めるときでも、ワーキングメモリをオーバーフローさせることなく対応できる。上司はこれまでの経験からこの重要性を認識しているので、繰り返し指摘するのだ。

【必読ポイント!】 「アテンションミス」の原因と対策

アテンションミスの原因
SIphotography/iStock/Thinkstock

アテンションミスとは、うっかりミス、見落としといった「注意」に関するミスのことである。うっかりミスや見落としなら「もっと注意しろ」で解決できると考えがちだが、実際にはアテンションミスを完全に撲滅することはできない。この原因はワーキングメモリと同様に人の「注意」には限りがあるためだ。

世界を見ているのは「眼」ではなく「脳」

実は人は、世界をそのまま見ているようで、見ていない。

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要約公開日 2022.03.25
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